ここは、弁慶達が通う中高一貫校。
この学校ではちょうど１２月２４日に終業式がある。
もちろん、１２月２４日といえば天皇誕生日の翌日。
そして、クリスマス・イヴだ。

 

クリスマス・イヴと言えばクリスマス・パーティである。
こんな楽しい年に一度のイベントをほっとく手はない訳で
生徒会では毎年クリスマスパーティが企画されている。

 

「それで、弁慶様、クリスマスパーティとはいったいどのような物なのでしょう？」
「去年やったとおりでいいんじゃないかな。みんなでプレゼントを持ち寄って
　ケーキを作って後は適当に食べたり飲んだりして、最後にサンタクロースに扮装した
　先生が、みんなが持ち寄ったプレゼントを適当に混ぜてみんなに配ってくれるんだよ」
「あの、弁慶様。それで、サンタクロースとはいったいどのような人なのでしょうか」
「だから、いい子に大きな袋からプレゼントをくれるんだよ。
　本当は煙突からはいってきて、枕元にある靴下にプレゼントを入れてくれるんだけど
　さすがにパーティでそこまでは出来ないからね」
「…布袋様に似た方なのですね」
「・・ま、まあ、１２月になればわかるよ、テレビでも町中でも
　サンタクロースの格好をした人はいっぱいいるから」
「ありがとうございます、弁慶様。
　ですから、ケーキを作って飲み物などを用意して宴会をすればよいのですね」
「ええと…まあ、基本的にはそんなところ。
　あと多少は出し物を考えておいた方がいいかも」
「それはいったいどういうことでしょう？」
「ほら、…やっぱり、パーティで適当に騒げばいいって言っても
　そこはさ。やっぱり、浮いてる人もいるわけだし…目立ちたい人もいるし」
「それは長野先生のことなのか」
「あ、与一、練習終わったんだ」
「ああ、さっきな。それより弁慶。おまえの方は練習をしなくてもよいのか」
「俺はこれからなんだよ。九羅香が先に紅葉の用事を済ませろっていうから
　とりあえず紅葉に説明しているところ」
「ふむ。それで、紅葉殿の用事というのはどういうことなのだ？」
「要するに、終業式の後のクリスマスパーティの準備のことだよ。
　俺は体験者だから大体わかるから」
「…生徒会のほかのメンバーもいるだろう」
「すいません。私が至らないばっかりに…」
「紅葉が謝ることでもあるまい。それで、いつものように有志を募るのだな」
「はい、そのつもりなのですけれど…」
「ちょっと弁慶いる？」
「なに？楓。おまえが俺に用事があるなんて珍しいな」
「ちょ、ちょっとあんたに聞きたいことがあるだけよ。
　なんていうかさ。…なんでクリスマスイヴが来るからって
　お守りやお祓いをやりたがる人が出るわけ？
　なんか、二人きりになる方法とか聞かれたりもするけど
　闇討ちの算段でもしてるのかしら」
「いや、そういう陰険なこと思いつくの楓ぐらい…」
「弁慶、あんたまじめに教える気あんの？」
「…すいません」
「ったく、あんたに聞いたあたしが馬鹿だったわよ。
　それで、本当はどういうことなのよ」
「ええと、つまり、デート・・だから、逢い引き出来るかどうかって話だよ。
　クリスマスは恋人同士で過ごすっていう風習があるんだ」
「ふーん。逢い引きの日だから二人きりになれるかどうか考えてるのね」
「楓ってそういうこともやるの？」
「ま、縁結びのお守りっていうのは、巫女の稼ぎの大切な部分だから」
「商売かよ・・・」
「神社を維持するにもお金がいるのよ」
「はいはい…って、ちょっと紅葉」
「なんだか、わくわくするような日なのですね。クリスマス・イヴというのは」
「ま、まあそうかな」
「それでは、あまりいい加減なことはできませんね、弁慶様」
「あ、ああ・・・そうだね」

 

恋人達の日という言葉を聞いて紅葉の態度がはっきりと変わった。
弁慶や与一や楓が引いてしまうぐらいに。

 

「よっ。なんか楽しそうな祭りでもあるのか？」
「玲奈様、入る時にはちゃんと扉からお入りください」
「いいじゃん。こっちの方が近道なんだからさ」
「そんな所から入ってくると泥棒と間違われますよ」
「忍者だって思ってもらえないかな」
「…いや、さすがに窓から入ってきたら無理があるだろ」

 

ちなみに、生徒会室は４階にある。

 

「まあ堅いことはいいっこなし。急がない時にはちゃんと扉から入るからさ。
　それで、なんかあるのか」

 

同じ説明を何度も繰り返されては読者はたまらないだろうから省略する。

 

「書く方が面倒なだけだろ。
　そういうことならあたしも一枚かませろよ。
　要はプレゼントをうまく使えばいいってことだろ？」
「…何か思いついたのか？玲奈」
「ま、そこらは、手伝ってくれる奴しだいじゃないか？」
「ふむ。確かに、我々だけでやるのも問題があるだろうな」
「こちらの時代にはある程度なれたといっても、前から住んでいる方とは違いますから…」

 

いや、今この時点で何か根本から間違えてる気がするぞ。

 

「紅葉。弁慶の用事終わった？」
「あ、九羅香様。今日はもう大丈夫です。
　明日からクリスマスパーティについての準備と打ち合わせをいたしましょう」
「クリスマスパーティ？なにかのお祭り？」
「はい、大変重要なお祭りなのです」
「それって、楽しそう？」
「はい、とっても楽しいです、九羅香様」
「じゃ、みんなで盛り上げないとね」
「はい〜そうですね〜みなさん〜」
「静、おまえいったいどこから入ってきたんだよ」
「扉からですよ〜だれかさんのように〜窓からじゃないです〜」
「いちいちつっかからなくてもいいだろ」
「ねえ紅葉、観月ちゃんたちにも手伝ってもらおうよ。
　祭りには歌がつきものだよね」
「そうですね、九羅香様」

 

こうして、生徒会主催によるクリスマスパーティのプロジェクトチームが発足した。
今年のクリスマスはいったいどんなイベントが起きるのだろうか。