てなわけで、大会当日である。
「うわ〜結構人が集まってるね」
「そうですね、意外と大きな大会みたいですね」
「サバイバルゲームも認知度が高まってるみたいだな」
「どこぞの会長みたいなあほな活動してるところばかりじゃないということのようですね」
「ん？ うわさをすれば、さゆりくん、あれはこの前対戦した学校ではないか？」
「そういえばそのようですね」
「大会に参加していただいてありがとうございます。この前のお礼はさせていただきますので、では」
「そうですか。なにぶん、寄せ集めチームですから、お手柔らかに」
「寄せ集め？ ちゃんとしたチームの一員ではなかったんですか？」
「うちは男女混成で2人しか会員がいないのだよ」
「こちらが会長さんでしたわね。男子の部ではがんばってくださいね」
「そうさせてもらうよ」
「では、つぎに会うときには大会の場で」
「では、そうさせてもらいましょう」
「ふう……さてと、大会の注意事項とかは把握してるからいいとして、そろそろ会場が違うから分かれるか」
「そうですね、しかし、山を二つも借り切ってやるとは、大きな大会ですね」
「その分参加費もかかっているのだよ」
「そんなお金どこから出てきたんですか」
「聞かない方がいい」
「つまり、生徒会が払ったんですね」
「はっはっは」
「まったく……生徒会に迷惑をかけてばかりのくせに、こういうときには生徒会に寄生するんですから。
まあいいです。生徒会が太っ腹だったということで」
「さて、では男子の部でがんばるとしよう、うちの団員は、無月にB.S.Eに弁慶にコオルくんと私か」
「女子の部は、私に九羅香さんに与一さんにまどかさんに卯月さんですね」
「では、がんばってくれたまえ」
「うちよりそっちでしょうが」
「こっちは因縁の対決などないからな。気楽にやってくるよ」
「あーそうですか、じゃ、がんばってください」
そういうわけで、24時間耐久サバイバルゲームが開始される。
さて、男子の部である。
「全員そろってるか？ って、B.S.Eはどこへ消えた？」
「お待たせしたでゴザる。会長殿の助っ人に不詳このB.S.E.参上つかまつったでゴザる。」
「なんだその格好は？」
会長ですらびっくりするのも無理はない。
鯖の着ぐるみを着て洗われたのだから。
「今日は皆で鯖威張るゲームを行うのではなかったでゴザるか？
せっかく長崎から取り寄せた鯖を参考にこの衣装を用意したでゴザよ。」
「いや、鯖が威張るゲームじゃないから。ていうか、その衣装じゃBB弾が当たっても自分じゃわからんだろ……」
「今回はペイント弾だから、当たったら相手からも見えますし……」
「どうせペアでの行動が基本なんでしょう？」
「そうだな、無月とコオルとB.S.Eと弁慶のペアを基本に行動することにしよう」
「会長はどうするんですか？」
「私は戦力外と言うことで遊撃に回る。まあ、期待はしてくれるな」
「いきなり期待するなですかかよ。まあ、当てにはしてないけどさ」
「そうずけっと言われると傷つくな。ま、やるだけのことはやるから心配するな。サバイバルゲームは生き残りゲーム。
敵を倒すより生き残ることが重要なのだよ」
「生き残るだけなら会長さんうまそうですけど、当たったら終わりなんですよね」
「その点はその通りだが、心配するな。ちゃんと防具は身につけておけよ」
「はーい」
こうして、ゲームは始まった。
24時間耐久ということで、長丁場である。そのため、広い場所で戦う分、会敵率は低い。
低いはずなのだが……。
敵を見事にヘッドショットで中てる
「まず、一人だな」
「すごいですね、無月さん」
無月にとっては、普通のことらしい。
雪の行軍……。
「落ち葉でしょ」
サバイバルゲームは、ある意味退屈との戦いでもある。
そして、緊張感との戦いでも。
今回は山岳、そして、森林戦である。
見通しはきかない。そのぶん、スリルが増す。
そして24時間耐久である、日が暮れれば夜戦である。
「熊とかは出る山じゃないから安心していいとは言っても、危険は危険だから
GPS携帯はなくすなって書いてありましたよね」
疲れもたまってくる頃である。そして、敵味方誤認も起きてくる頃だ。
「あれ？ 会長？」
「不覚……」
生存率が高いと豪語したわりに、コオルに後ろをとられた会長であった。
B.B弾で撃たれていればそこで死亡判定であったろう。
「会長か……食べたら腹壊すな」
そして一先ず首だけ残して地中に埋めた
「いいんですか、無月さん。会長埋めてしまって」
別に問題ないだろう、会長だし。
そんなこんなで夜が明ける。
言い忘れていたが、この大会は、大会本部からの定期的な生存確認には答える必要がある。
安全確保のための処置である。
弁慶たちの通う高校の組は、優秀なもので全員がまだ生き残ってるらしい。
「全員がって、会長どうやって抜け出したんだろう……」
気にしてはいけない、会長の悪運と生存能力はゴキブリにも勝るのだ。
さて、舞台を女子の部に移そう。
「はあ……なんでこんなことになるのかしらね」
「ぼやいても始まらないよ。リーダーがそんなことじゃ勝てるものもかてないって」
「参加したからには勝たねばなるまいな」
「ま、やるからには全力でやらないとね」
「そうそう、全力全開」
女子の部は、さゆり以外のメンバーの方が乗り気になっていた。
まあ、気持ちはわかる。さゆりは、勝手に目の敵にされてるだけなのだから……。
「でも、敵はあの学校以外にもいるって理解して、で、作戦だけど……」
「要するに、単独行動とらないようにしてればいいんでしょ。
私とまどか、九羅香と与一が一緒に行動してればいいんじゃない？」
「まあ、そういうことになるわね。じゃあ、気をつけて」
「はーい」
こちらも、作戦らしい作戦はないようだった。
とはいえ、2人で行動してれば、目が４つ。奇襲を受ける可能性はそれだけ減る。
九羅香与一組は百戦錬磨だし、まどかと卯月も戦いの素人というわけではない。
「私はまどかさんたちの援護にまわろうかしら。生き残りゲームであって、殲滅戦じゃないはずだし」
ところがどっこい、さゆりたちの噂は鳴り響いているらしく、首をとってやろうとほかの学校が
親の敵のように襲いかかってくる。
「なんでこっちばっかり攻撃してくるのかしら」
「知らないわよ。でも、こういう方が楽しくない？」
「作戦変更、こう襲いかかってくるんだったら、積極的に殲滅していくわ。
私が目になるから、2グループで挟み撃ちして各個撃破してやりましょう」
「O.K」
忍者のさゆりがスカウト、九羅香と与一が打撃部隊、まどかと卯月が遊撃になっての殲滅戦が開始される。
これはうまくいって、並み居る強豪校を含む他の学校をなぎ払っていく。
「日暮れまでにだいぶ倒しましたね……」
「けど、あの学校はまだ来てないよ」
「……そういえばそうね、不気味と言えば不気味だわ」
「戦力を温存してるのか……夜襲をかけようとしてるのか……」
「あなたたちは、安全なところで寝ててちょうだい。
私は一日ぐらい寝なくて平気だから不寝番に立ってるわ」
さて、翌日の男子の部に話を戻そう。
「男子の部に話を戻されても、ずいぶんと会敵率が減ったな」
「いったん全員集まりましたけど、作戦とかたてようがないですよね」
「みんなつぶしあったみたいだからな。とりあえず、われわれも生き残ることを最優先しようか」
男子の部は、みんな疲れ果てているようだ。
いっぽうの女子の部である。
「夜が明けても、まだうちが目の敵は変わってないみたいだね」
「だね……疲れるのをまってうちを狙ってる学校もあったみたい」
「だけど、作戦は今まで通りで大丈夫。さゆりさんが確実に敵を見つけてくれるから。
さゆりさんは本当に頼りになるよ」
「！」
「どうしたの、さゆりさん」
「彼らが来たよ」
「あの学校が来たの？」
「そう……ほかの学校を殲滅してから来たみたい」
「つまり、彼女たちもうちと条件おんなじってこと？」
「そうみたいね……実質、うちといっきうちになるってことかな」
「向こうのスカウトはつぶせない？」
「スカウトはいないから、手探りできてる、2人と3人のグループに分かれてる」
「2人のグループを先につぶそうか」
「そうだね」
「3人のグループは私が見張ってるから」
挟み撃ちで2人のグループをつぶしにかかる。
正面から陽動でまどかと卯月が時間をかけ、そのすきに与一と九羅香が勝負をつける。
なんどもやって成功し続けた作戦だ。
「勝負あったね」
「……ごめん、まどか、向こう強いよ……」
「どうしたの、卯月」
「弾が当たった」
「卯月脱落か……」
「次は３：３になるね」
「いや、私も戦闘に加わる。それに包囲戦はくめる」
「４：３か、それでも厳しいことに変わりはないかな」
注意しながら前進する3人組。だが、忍者のさゆりに気づけるほど強くはない。
対するさゆり組の作戦は単純、まどかが足止めしたら与一が狙撃で数的有利を作り
背後から九羅香とさゆりが突っ込んでけりをつける。
「弓ではないから扱い慣れないが、問題はない」
「この先の一本道で勝負をつける……いくぞ」
与一も木に登って狙撃位置につく。
そして……まどかが射撃すると戦いの火ぶたが切って落とされる。展開しようとする3人のメンバー。
だが与一の狙撃が一歩早い。
中央の一人が脱落。
狙撃手を探そうと二人がもがくうちに九羅香が切り込む、あと一人のはず……。
「部長の敵は私がとります」
「へっ！」
反応が早いっ！
まるで加速装置を使ったかのごとくライフルを放って九羅香を撃つ。
九羅香が脱落する。
与一は木を降りていて戦闘要員ではなくなっている。
まどかは素人でいわれたことしかできない。
つまり……。
「事実上の一騎打ちってわけね」
「そうですね。行きますよ」
だが、この勝負はすぐについてしまった。
まどかが機転をきかせて間合いを詰めたのだ。
二人とも、そのまどかには気づかない。
まどかは、落ち着いて、彼女に射撃を加えるだけで良かった。
「まどかの射撃が当たったわね」
「！……一騎打ちって言ったのに」
「勝負は勝負よ。これで終わり」
こうして、戦いは事実上の決着を見た」
戦いすんで日が昇って。
「いやーさゆりくん、大会は参加することに意義があるのだよ」
「なんか、男子の部も女子の部も優勝ってことになったみたいですけど、いいんですか？」
「言いも悪いもあるまい。結果が出てしまった以上はそれで行くしかないのだよ」
「男子の部はともかく、女子の部はいろんな学校から再戦申し込まれてますよ。どうするんですか」
「……まあ、なんとかなるだろう」
「なんとかとか言って逃げないでください。参加っていったの会長なんですからね、会長」
「私は女子じゃない、再戦するのはさゆりくんだからな」
「部員集めは会長の責任ですからね〜」
そんなこんなで、大会は終わった。
そして、さゆりには頭痛の種がさらに増えたのだった。