さて、クリスマス・イヴの前日は天皇誕生日なのでお休み。
そんな中、せっせと働いている人たちがいた、弁慶たちの通う学校で、出し物のお手伝いをする人たちである。
「後はそこに会長用のトラップを仕込んでおいてくれ」
無月がコオルに指示をだす。
「なんでここなんですか？」
「今までの蓄積したデータからここに仕込むのが会長相手に一番効果的だからな」
「てか、なんであの会長狙い撃ちなんだろう」
「会場中いろんなトラップ仕掛けられてるのにね」
そう会話するのは、こんかい出場見送りのまどかと卯月である。
ちなみに、晶と結はラバーズ＆チャリオッツの手伝いではなく、別な手伝いに回ってるのでここにはいない。
やがて出し物すべてのトラップの設置が終わる。
誇らしげに紅葉に報告するのは、B.S.Eだ。
「戦車競争の障害物設置が全て終了したでゴザる。
『勝利、敗北、そこに意味は無い、突破されるか全滅させるか…』
『クレイモア…! 抜けられると思うなよ…!』
『おまえ達が…望まれないトラップを作る…』
『つい、調子に乗ってやりすぎてしまったんだな、これが』
･･･と、トラップの設置担当の下忍達も誇らしげに成果を語っていたでゴザる。」
「けが人が出なければよいのですけど、それは大丈夫でしょうね」
それは、当日になってみなければ分からない。
というわけで、クリスマス・イヴ当日である。
「今年も無事やって来ましたクリスマス、通知表が無事な人も駄目で補習な人も楽しみましょう」
「今回はゲストとして弁慶と同じく平穏な学園生活が送れそうに無い真尋さんに来ていただいています」
「真尋さん、どういう意味なんでしょうね」
「弁慶先輩って、タイムスリップとかしたんですよね」
「ああ、そうだけど、おまえもなんかそういう体験するような事情でもあるのか？」
「……まあ、可能性ないとは言えないか」
「お任せください。そういう事態に陥らないよう、このニャルラトホテプが真尋さんをお守りいたしますですよ」
「おまえがトラブル持ち込んでる件数の方が多い気がするんだが……」
「やだなあ、気のせいですよ真尋さん：
「そうかぁ？」
「そうですよ。そんなことより、今夜はクリスマス・イヴですよ。サンタクロースが恋人たちのために熱い夜をプレゼントしてくれるですよ」
「よい子にクリスマスプレゼント」
「おんなじ事です」
「全然違うだろ」
「ともかく、今回与一も俺たちも審判員に回ってるからな。ずるはしないようにがんばれよ」
「あ、与一部長は審判なんですか。なんか安心できますね」
「ふっふっふ、最大の敵は消えましたね真尋さん。優勝はもらいましたよ」
「そっちかよ」
「ニャル子、少年との優勝は認めない」
「真尋くん、ごめんね」
「なんだ、ハス太も出るんだ」
「うん、クー子さんと一緒に」
「そうか、ハス太もがんばれよ」
「ありがとう、真尋くん」
「ユーノくん、豪華賞品プレゼントだって、がんばろうよ」
「なのは、僕たちはケーキを持ってくるだけじゃなかったの」
「部外者の参加も大丈夫だっていうんだよ。せっかくだから参加させてもらおうよ」
「……確かあなたは翠屋の娘さん……」
「はい、高町なのはです、こっちがユーノくん」
「ユーノ・スクライアです」
「二人も戦車競技に参加するんだ」
「え、おもしろそうだし、せっかくだから参加しようとおもって」
「ラバーズっていうのは引っかかるけど、古代の戦車に乗れるチャンスは逃したくないと思ってね」
「かわいいカップルだね、お似合いかも」
「あはは、そんなんじゃないよ」
「ええ、まあ」
「ニャル子、からかってやるなよ」
「ところで、競技の内容はどうなってるんですか」
「はっはっは、そんなことも知らずに参加しようとしていたのかね」
「会長じゃないですか。そういう会長は内容を知ってるんですか」
「よくしらん。恋人たちが参加すると言うから妨害するために参加するだけだ」
「人のことが言えた立場じゃないじゃないですか」
「そういうさゆりくんは知ってるのかね」
「調べましたよ。戦車に乗って決められたコースを走るレースですけど、途中弓矢を使って相手を妨害してもOK.
走路にトラップも仕掛けてあるから注意しろ、っていう代物です」
「なのは、危険じゃない？」
「バリアジャケットがあればなんとかなるよ。それより魔法の使えないほかの人たちは大丈夫かな」
「真尋さんの事は私が守りますから、大船にのった気持ちでいてください」
「守るとかそういう問題じゃないだろ。ていうかよく生徒会もこんな出し物にOK出したな」
「生徒会がこの手の出し物をやるのはいつもの事ではないか。気にしたら負けだぞ」
「ふっふっふ、どんな手を使ってでも勝ってやりますよ」
「なんか言ったか、ニャル子」
「いいえ、何にも」
「なんか今物騒なことつぶやいた気がしたが」
「気のせいですよ真尋さん」
「だといいんだけど……」
というわけで、ラバーズ＆チャリオッツの競技が始まる。
「真尋さん、参加者といっても、私たちと会長さんと、なのはちゃんたちと、クー子たちの4組だけみたいですね」
「まあ、SASUKEみたいなもんだからな」
「はっはっは、参加者が少ないのは良いことだ。わがしっと団の活動の成果だな」
「関係ないと思いますが……」
「頑張ろう、ユーノくん」
「へえ、これがチャリオットかぁ」
「ユーノくん、全然聞いてない……」
「ハス太、馬の方は任せる」
「うん、弓矢の方はクー子さんに任せるから」
「準備はいいか？ ……用意！ 始め！」
各車同時にスタートする。
「先手必勝でゲスよ。真尋さん。まずはクー子を脱落させるです」
「なんでクー子なんだ？」
「絶対こっちを目の敵にしてるですからね。やられる前にやっとくべきですよ」
「基本がレースだろ……って、言ってる先から」
先頭を行くなのはのチャリオットがクレイモアの炸裂にさらされる。
「なのはっ！」
「アクセルシュート！」
全弾迎撃して打ち落とす。
「さすがなのはだね」
「えへへ……毎日練習してるから」
さすがは後の魔王である。
「予定変更した方がいいかもしれないですね。あの子、侮れないですよ」
「すごいな。あれだけある弾を全部魔法弾で打ち落とすなんて」
「さて、こっちもそろそろ本気でクー子をつぶすです」
「そう言いつつクー子かよ……まあいいけど」
「ニャル子……私のところに来てくれたのね」
「そのうんだ脳みそに天誅食らわしてやるですよ」
ニャル子の矢〜当然殺傷能力はないが、当たると痛い〜が、クー子に襲いかかる。
クー子はその矢を避け……。
「これぞ部長直伝金剛の三矢ですよ。避けたつもりでしょうが同時に3本矢を放ってるですよ」
「ニャル子、いつのまにそんな技を覚えてたんだ」
「ニャルラトホテプを甘くみてもらっちゃこまるですよ」
「本気で行きます」
クー子も矢をつがえる。
「弓道部員が弓矢で負けたとあっちゃ、廃業なんでゲスよ」
「要は勝てばいい。ハス太、馬車を近寄せて」
「うん、いいよ」
「近づいてなにするつもりでゲスか？」
ニャル子はいぶかしがるものの、クー子のなすがままにする。
何か手はあるだろうと思ってるものの、その手に乗ってやるつもりだ。
「ニャル子、油断するなよ、クー子も勝算はあるみたいだぞ」
「その前に打ち勝つ」
さらに一撃入れる。
クー子は今度はよけもしない。まともに受ける。
「ああ、ニャル子の愛が痛い」
「変態ですかあんたは」
「ニャル子、この距離なら私の矢でも届く」
「どういう意味」
「要は矢は当たりさえすればいい……必殺、無限連弾」
無限連弾、連弩を用いて無限に矢を放つ必殺技だ。
これを普通の弓矢でやろうというのがクー子の考えだが、付け焼き刃なので狙いが定まらない。
「当たらなければ動と言うことはないでゲスよ」
「だから近づいた。ちかければ少しは当たる」
「近ければそれだけ弓矢の威力は増すですよ……これで終わり……えっ！」
「矢は風の影響を受けますよ、ニャル子さん」
「ハス太」
「風で矢をそらせたのか、ハス太」
「そうだよ、真尋くん」
「一筋縄じゃ行かないな。ニャル子、ていうか、こんなことしてるうちに、先頭集団からはなされてるぞ」
「会長なら問題ないですよ。けど、なのははダークホースでしたね」
「今トップだし、止めようがないかも……ニャル子、一時休戦」
「了解。なのはを止めるです」
「ふっ、やらせると思うか」
「会長、なんで邪魔するですか」
「恋人を邪魔するのがしっと団。小学生の幼なじみ同士などすておくわ」
「要するに私と真尋さん以外どうでもいいってことですね」
「今回はそういう事になるな」
「僕としてはそれにも異議を申し立てたいところなんだが……」
「いいわけは見苦しいぞ。しっと団の嫉妬パワーをみせて……おわっ」
「あ、ぼくがしかけたトラップだ」
そう、コオルが仕掛けたトラップにしっかりとはまった会長であった。
「これで会長は一時脱落ですね」
「これで一時でしかないってのもすごいですね」
「まあ、会長だから……」
「なのは、みんなが迫ってきたよ」
「ユーノくん、ゴールも近いよ。このまま逃げ切れるかな」
「頑張ってみよう、せっかくここまで来たんだから」
「うん、そうだね」
「もう妨害とかしてる場合じゃなくなってきたですよ。全力で勝ちに行きますよ、真尋さん」
「よし、分かったニャル子、鞭を入れるぞ」
「ハス太、ニャル子よりは先に行く」
「うん、頑張ろう、クー子さん」
「はーはっはっは、私がこの程度で脱落すると思ったのかね」
「後ろから猛スピードで会長が追い上げてきますよ真尋さん」
「本当に一時脱落でしかなかったんだ……」
「死ねい、八坂真尋！」
「なんでぼくなんですかっ！」
「真尋さんはやらせませんっ！」
「少年、先に行かせてもらう」
「なのは、もうすぐゴールだよ」
「うん、ユーノくん」
こうして、乱戦の末勝利を飾ったのは……
「ユーノくん、優勝だよ」
「やったね、なのは」
「うぅ……会長の妨害さえなければクー子に負けることなどなかったのに……」
「ニャル子には勝ったから良かったということにしようか」
「真尋くん、楽しかったね」
「なんか納得いかない落ちでゲスよ」
「まあ、無事に終わって良かったということでいいんじゃないかな」
「このイベントがラバーズの敗北に終わったと言うことで我がしっと団の大勝利だな」
「最下位が胸張ってどうするんですか」
「あー、どないしょー、優勝賞品が、届けてもらった翠屋のケーキなんやけど……」
「……」
こんな事もある。
そのころ京介は、リンクス先生に、お茶の差し入れをしていた。
「リンクス先生お疲れ様です、温かい飲み物をお持ちしました。」
「しかし、過激なイベントをたててるものだね。大丈夫なのかい」
「たぶん･･･大丈夫だと思いますよ。
家の学校、こういうイベントで怪我人でたことが無いんですよ。
みんな元気ですよね。」