さて、草木も眠る丑三つ時といいながら、生徒会のメンバーは交代で起きて事務局に詰めていた。
なんのためって？　そりゃ合宿ともなれば、夜中に腹痛を起こす生徒も現れれば、歓楽街に出かけようとする
不届き者も現れたりする。責任者は大人の先生方とはいえ、主催は生徒会なので生徒会メンバーも
起きていなければならないのだ。

今は弁慶と九羅香にハス太、そしてボランティアの京介に購買部から動員されたみあの4人が事務局に詰めていた。

「さすがにこの時間になると落ち着いたな。12時頃担当の紅葉たちは大変だったみたいだけど」
「だね、玲奈の忍猫も大活躍だって聞いたよ」
「なんで夜の街に出かけたがるんだろう。ちゃんと自由行動の時間も用意してあるのに」
「……あの……そんなに……購買部の……品揃えが……その……悪かった……ん……で……しょう……か……」
「いや、そう言うのとは無関係に遊びに出たがるんだよ。なんていうか……財布にお金があるのに万引きする人みたいなもの？」
「それは……分からない……です……」
「みあみたいな、健全な人にはわからないって、弁慶」
「分からない方がいいことだけどね、よっしゃ、革命っと」
「ああ、せっかく絵札をそろえてたのに……」
「大富豪っていろんなローカルルールがあるよね。
　この間なんて『私の居た中学だと７が一番強い』とか言ってた子も居たし･･･
　はい、革命返し。そしてこれで上がりっと。」
「なにぃ」

詰め所は、平和であった。

同じ頃、真尋たちの部屋はというと……

「ちょ、ちょっとまて、おい、典泰、起きろ、ていうかハス太はどうした」
「人間たちはちょちょっと秘術で眠っててもらいました。ハス太なら生徒会の不寝番で詰め所に行ってる時間ですよ」
「ああ、そういえばそう言ってたっけ、忘れてた。そうだ、ハス太がいるからって油断してた……」
「うふふ〜怖くないですよ〜痛くないですよ〜」
「なんか立場逆な気もするんだが……」
「別に立場逆転でもいいですよ。そういうプレイの方がお望みでしたら」
「ていうか母さんもいってたろ、健全な高校生のつきあいしろって」
「いいじゃないですか、私はもう働く女性なんです」
「僕が高校生なんだよ、ていうかニャル子も今は高校生じゃないか」
「それはそれ、あれはあれということで。今は高校生カップルだってやることやってる時代ですし」
「いつからカップルになった。ていうか高校生らしい健全なつきあいじゃないだろ、それ」
「いいじゃないですか、エロゲが趣味な中学生なんて全年齢向きアニメだってある時代なんですから
　高校生で夫婦になったって」
「飛躍すんな。ていうかいつから結婚なんて話になったんだよ」
「もう、真尋さんったら照れ屋さんなんだからぁ」
「照れてない、ていうか照れるとか照れないとかの問題じゃないだろ。それ以前にこの宿って
　立て付け悪くて防音もたいしたことないぞ。この部屋だけ眠らせてもどうしようもないだろ」
「そこはまあ、我慢しますよ。鍵もちゃんとかかってるから邪魔は入りませんって」
「いや、生徒会と先生方は鍵……」
「悪い子はいねがー」
「泣ぐコはいねがー」
「誰だっ！」

見事にはもった。
そりゃそうだろう。
包丁の代わりにバツーカを担いだなまはげが現れればニャル子じゃなくたってびっくりする。

「合宿の時の見回りの正装と聞いたでゴザル。
　違反者が居たら、包丁で刺すようにと事でござったが包丁が借りられなかったで代わりでゴザル。
　これから対テロリスト用ゴム弾が撃ち出されるでござる。
　ほらこのように音（ズガーン）も静かでゴザル」

生徒会の見回りである。生徒会の見回りなので、鍵だって持ってるのである。
唯一の問題は、この時間帯ならさすがに何もなかろうと、志願でやってきた
B.S.Eを割り当てた、ということであった。
もっと早い時間帯なら、別なボランティアがいくらもいたのだが……。

「くっ、こうなったら番組変更！　ニャルラトホテプvsなまはげでお送り……」
「いい加減にしろ」
「痛いですよ真尋さん……」

真尋さんのフォークは、見事にニャル子の脳天に突き刺さったのであった。

さて、翌朝。

「うう、……結局あれから目がさえてろくに眠れなかった……」
「昨日はお楽しみだったのか？」
「あ、無月先輩……おはようございます……」

冗談を切り返す元気さえない真尋であった。

一夜でこんな調子で大丈夫か八坂真尋。がんばれ八坂真尋。
合宿編はまだ続くぞ。