そのまた翌日。

「朝ですよ真尋さん。真尋さんってば〜」
「そうだな、朝だな、おはようニャル子」
「えっ、なんで声が後ろから」
「こんな事もあろうかと早めに起きておいて正解だったな。
　もう歯も磨いたし朝飯の準備も終わってるぞ」
「ううっ、私ってそんなに信用ないですか」
「ベッドの上にのしかかって言う台詞かそれがっ！」
「痛いです真尋さん……」
「いいからさっさと降りろ、飯食って学校行くぞ」
「はい……」

てなわけで学校に到着である。

「腕を組んで登校とは、その行為、宣戦布告と見なす！」
「げっ、会長」
「真尋さん、下がっていてください。こいつは私が仕留めます」
「いや、おまえが余計なことしなけりゃ狙われずにすむんだが……」
「ニャル子、本名不明の会長ついてだが一先ず頭部と心臓を狙うなよ。
　他の部位にいくら攻撃しても会長は持ち前の生命力でゴキブリの如く生還するからそれで十分だ」

校門で偶然通りがかった無月が、興味もなさげにニャル子に声を掛ける。

「わっかりましたあ、じゃあいっきますよぉ」
「女と戦う趣味はないといったろう。というか女を盾にして恥ずかしいと思わんのか貴様は」
「ふっ、私と戦うと思って怖じ気づきましたね」
「会長、またつまらないことやってるんですか」
「おお、さゆりくんではないか、ちょうどいいところに通りがかった。ニャル子くんを押さえておいてくれたまえ。
　私はこれからしっと団の仕事をするところなのだよ」
「なんで私がそんなのにつきわないといけないんですか、勝手に一人でやっててください」
「ちっ、仕方ない、では女であろうと手加減はせんぞ」
「望むところ〜」

一撃必殺。

「安心せい、峰打ちじゃ」
「……ニャル子、おまえ本当に僕を守る気あるのか……」
「え？」
「はっはっは、女とは戦う気がないと言ったはず、本物の一発だけ八坂の胸にぶち当てたのだよ……がくっ」
「真尋さん、真尋さんってば、大丈夫ですか、必ず12時間以内にイージス艦を手に入れて見せますから」
「いや、そんなわけわからんネタ振らなくてもいいし、別に怪我とかしてないから大丈夫。
　それよりつまらないことで時間食ったから、急がないとホームルームに間に合わないぞ」
「ああっ、真尋さん、それは行けません急ぎましょう」
「だから手を引っ張るなって」

戦い破れた会長の元にやってきたのは、修吾であった。
会長はすでに回復している。ゴキブリをしのぐ生命力は伊達ではないらしい。

「さて、会長に話したいことがあるんですが…その前に聞きたいことがあるんだが」
「なにかな、別になんでも聞いてもらってかまわんぞ」
「確か、男女が一緒にいるだけでもしっと団の標的でしたよね」
「一緒にいるだけというか……カップルなら自動的に標的にしているが、それがどうかしたのか？」
「それはつまり、他者から見てそうだと思えると言うなら…会長、しっと団は現時点を持って解散となります」
「？　どういうことだ？」
「理由は簡単、会長貴方の傍に居るのはいったい誰でしたっけ」
「さゆりくんがどうかしたのかね？」
「そうです。さてこのとき他人から見たらどう見えるでしょうかね」
「どうみえるって、さゆりくんはただいるだけだろう？」
「ええ、うちから見ても付き合っているんじゃないか？と思うときもあります」
「さゆりくんがつきあってるうちに入るなら、クラスメートは全員カップルではないか。
　一つ屋根の下に同居したり、お弁当を持ってきたりはしてないぞ」
「で、本題…今のことをふまえて真尋達を見て同じことが言えるかい」
「……」
「ま、そう言うことだ。二人は付き合ってはなく、ニャル子の一方通行アタック中と言うわけだ」
「ふむ、一方的アタック中か……一方的アタック中で、つきあってるわけではないのか。
　まあ、参考にはなった、ありがとう」

さて、ホームルームが終われば昼休憩である。
なぜか京介も一緒に混じって一緒にお弁当を食べている。

「はい、真尋さんあーん」
「いつお弁当を作ったんだよ……」
「大丈夫ですよ真尋さん、こんどはコンビニ弁当だから絶対に真尋さんの口にも合いますって」
「コンビニ弁当か、なら安心だな」
「……うう、なんかその台詞が寂しい……」
「手作りじゃ何入ってるかわからないもんな。宇宙の素材とか使われたら怖いじゃないか」
「大丈夫ですよ、地球人にもちゃんと消化できる食材です」
「地球の食材を使えっ」
「地球の食材だって芋虫とかざざ虫とかいろいろあるんですよ」
「だったらなおさら宇宙の食材とか恐ろしいだろ」
「へー、ニャル子ちゃんて宇宙人なんだ。
　この学校にはいろいろな人が今まで来たけど、宇宙人は初めてだね。
　これ碧屋のシュークリーム。とっても美味しいからどうぞ。」
「真尋さん、シュークリームだそうですよ、はいあーん」
「だからなんでそうなるんだ。いいよじぶんで食べるから」
「そういう風な食べ方すると、いいシュークリームはクリームがしたに落ちちゃうんですよ。
　私が持っててあげますから、上を向いて食べてくださいな」
「一人で上を向いて食べればいいような気がするけど……」
「ところで、真尋君が狙われている原因とか犯人は誰か他の人が調べているの？」
「それを調査するのも私の仕事です」
「胸張って言うな、全然やってないだろ」
「真尋さんをおそう敵を捕まえて吐かせるんじゃないですかぁ」
「一撃必殺で退治してたよな、おまえ」
「知性のないナイトゴーントレットじゃ捕まえても仕方ないからじゃないですか」
「知性ある奴でないとだめってことか」
「そういうことですよ、真尋さん」
「知性ある奴が来るってことはあるのかな？」
「知性ない奴らじゃらちがあかないってわかれば、当然来るでしょうね」
「いつになるんだ？」
「さあ、一週間先か一ヶ月先か、それとも一年後か……」
「……」

そして、放課後、部活に向かうニャル子と真尋のコンビに無月が声を掛けた。

「ニャル子だ……いきなり恋人は急ぎすぎだまず友人からはじめるべきだろ」
「名前を呼び合ったら友人ですよ無月先輩」
「どこの魔法少女だ」

そのころ、B.S.Eは会長を口説いていた。
もとい、会長と行動を共にしていた。

「会長殿、御館様からの命でござる。
　我らは我らで早急に真尋どのを狙う犯人を見つけるでござるよ。」
「見つけると言っても、どうやって見つけるつもりだ？
　手がかりも何もないだろう」
「大丈夫でござる。クトゥルーの神々は拙者の国では有名でござるから犯人は直ぐに見つかる出ござる。
　それに、昔から『眼と眼があったらSAN(正気度）チェック』という言葉がある事からも判るように
　見つけさえすれば発狂するので直ぐに判るでござる。」
「そう簡単にいけばいいが、だいたいがニャルラトホテプが来ても誰も発狂してないではないか」
「会長は発狂してたみたいですけどね」
「おお、いいところに来たさゆりくん。最近我々がカップルに見えるとか言う怪しげな噂が流れているらしい。
　手も握ったことがないのに、なぜそんな噂が流れるのか非常に謎だが、どういう事情だろうな」
「私に聞かれてもわかるわけないでしょう。それより八坂くんを狙う犯人捜しでもしてみたらどうです？」
「自作自演ではないのか？　カップルになろうという陰謀で……」
「そんな暇な宇宙人もないでしょう。まじめに考えてください」
「そうか……カップル陰謀でないとすれば、一体どんな陰謀があるというのだろう」

どんな陰謀があるというのか、それは次のお話とさせていただきとうございます。