さて、ハイキング当日である。

「マミさん、なんだか、怪しげな化け物が出るから気をつけるようにって言われたけど、大丈夫かな」
「鹿目さん、大丈夫なように、私たちが頑張らないといけないのよ」
「頑張りましょうね、まどかさん」
「うん、ほむらちゃん、一緒に頑張ろう」
「あーったくたりぃなあ。こっちから積極的に見つけてぱぱっと退治しちゃえばいいじゃんかよ」
「一応は集団行動なんだから隊列を乱せないよ、杏子ちゃん」
「はいはいそーですか」
「っていうか、なんで違う学校のあんたが参加してるのよ」
「ちゃんと許可はとってるって。あたしは今回は生徒会の依頼でバイト参加」
「そうなんだ。じゃ、本気で結構やばいのかも」
「さやかちゃん、離れないでね」
「う、うん、まどか、よろしく」

魔法少女達は、一団となって山を登っていく。

一方の生徒会組は、引率という名目である程度自由が効く。
前方警戒に当たってるのは、玲奈の忍猫達だ。

「九羅香、今のところは問題ないみたいだぜ」
「ありがと玲奈、観月ちゃん、異変は感じない？」
「ええ、今のところ邪気は感じません」
「ま、今回は魔女の可能性もあるし、そしたら魔法少女達の出番だけどさ」
「使い魔が出てくりゃほかの連中の出番もありだろうけど」

そんな中、B.S.Eもいつもの忍者姿で先行しての偵察に行く

「それでは、拙者は先行して危険が無いか調べてくる出ござる。御免」

問題は、妖魔とか魔女とかの気配を探知できないただの素人だという点だけである。
そんな装備で大丈夫か？

「大丈夫、問題ないでござる。」
「問題ないって……玲奈の忍猫たちは、訓練を積んでるけど、B.S.Eは
　こういうことに関しては素人じゃないの？」
「B.S.Eがはまったら、うちの忍猫が知らせてくるように見張ってるから大丈夫だろ」
「それじゃ意味ないんじゃない？」
「猫をスルーして、人間をはめる程度の知能のある相手だと困るからさ。
　B.S.Eには先行偵察してもらおうってわけ。あいつなら、少々の危険なら
　クリアしてくれるさ」
「だといいんだけど」
「それより問題は、話をややこしくしそうな連中の方だぜ」
「話をややこしくしそうな連中？」

弁慶が話をしているところへ、無月が現れる。

「なんか邪な気配を感じるな……一つは会長であっちに感じるのが本命か」

「気配を感じるって……観月、気配を感じた？」
「ええ、確かに、あちらの方から」
「どうやら、B.S.Eって撒き餌に食いついたみたいだぜ。
　弁慶、九羅香、無月、戦闘態勢に入ってくれよな。
　紅葉、静達生徒会役員を使って一般生徒の待避を頼む。
　あたしは忍猫を使って状況の把握をするからよ」
「了解」
「そこそこの数だな……てっきりまた雑魚ズでも蘇ったのかと思ったが杞憂か」

妖魔、というより、使い魔が襲いかかってきたのである。
使い魔の数からみて、ちょっと骨のありそうな魔女である。
これは、先行したB.S.Eの安否が気遣われるレベルである。

だが、今は目先の使い魔退治、そして、一般生徒の安全確保である。
特に一般生徒の安全確保は最優先だ。危険を承知で連れてきているのだから……。

「何か出るの？
　困ったなぁ、いつもの救急キットしか持ってきてないから怪我したら大変だよ？
　みんな怪我には十分気をつけてね。」

京介はぼやくが、後の祭りっちゃ、後の祭りである。
出るの、ではなく、出た後なのだ。

「はいはい、ちょっとどいて、ちょっとどいて」
「張り切りすぎだよ、さやかちゃん」
「まどかがのんびりしすぎなんだってば。
　魔女が出たんでしょ。急がないと大変なことになっちゃう」
「それは美樹さんの言う通りね。急ぎましょう」
「はい、マミさん」
「バイト代〜」
「それだけ食うにはたくさん稼ぐ必要ありそうだもんね」
「ん、まあね」
「あ、鹿目さん、使い魔が……」
「雑魚相手に魔力の消耗はしたくないけど……」
「けど、生徒の安全は優先よ、ティロ……」
「猿渡流忍術、雷神！」

現れた使い魔は、雷の嵐によって一掃された。

「今のはいったい……」
「この場は我々に任せて急ぎ給え」
「あんたはなんもしてないでしょうが」
「まあ、そうとも言う、戦いはさゆりくんに任せるとしよう」
「いいですけどね。会長は員数外でも」
「ありがとうございます。……いったいどういう風の吹き回しなんです？」
「別にどういう風の吹き回しと言うこともない、君たちは男女のカップルではない、ただそれだけの理由なのだよ」
「はあ……」
「女の子同士ならいいんだ」
「どういう意味なのかしら？」

どういう意味なのか聞かれても困る。

ともかく、魔法少女達は先を急いだ。
無月達が使い魔を切り伏せている現場を過ぎ、そしてB.S.Eが魔女に取り込まれようとしているその現場へ。

「鹿目さん！」
「はいっ！」

まどかの弓がB.S.E.を絡めている糸を焼き切る。

「多少やけどしたかもしれないけど……ごめんなさい」
「アリアドネ、ね」
「マミさん……来ます」
「バインド合戦ね、私と張り合うつもりなのかしら」

粘着性の糸を吐くことで動きを封じようという蜘蛛の魔女。
これに対して、マミさんもまた、糸で動きを封じるのを得意とする魔法少女だ。

「マミさん……」
「動かないで、下手に動くと絡め取られるわよ」

マミは銃を乱射する、魔女には当たらない。魔女は勝ち誇ったように接近する。

「マミさん！」
「大丈夫。見てなさい……」

蜘蛛の魔女のあごがマミののど笛をかみ切ろうと接近した瞬間、蜘蛛の魔女の突進が、止まった。

「どうやら、あなたの糸は自分の動いた場所と、はき出すことしか出来ないみたいね」

マミの糸の方は、射撃した穴からでも打ち出す事が出来る。
それを知らなかった魔女は、穴からはき出された糸に絡め取られて引き戻される。

「……これで終わりよ。……ティロ・フィナーレ！」

魔女の結界は解除され、あとにはグリーフシードが残されたのだった。