はるの、うららの、隅田川。ではなく、ここは学校の入り口から続く桜並木。

「初夏になる頃は毛虫通りに早変わりで風流とか言ってられないんですけどね」
「それはまだ先の話だよ紅葉、それより今を楽しもうよ」
「そうですね、九羅香様」
「……どうしたの、廉也」
「観月様、肩車をいたしましょうか。ここの桜は背が高くて桜の枝に触るわけにもいかないでしょうから」
「大丈夫ですよ、廉也。桜の花に触ることはできなくても、桜の花を感じることはできますから」
「それならよいのですが……」
「……んー、普通にお花見の会になってるみたいだな」
「みたいですね〜。みねあさんも桜餅とかを売ってもうけてるようですし〜、荒れる要素はなさそうですね〜」
「みたいだな〜って、おい無月、おまえ何飲んでるんだよ」

見ると、無月は発泡酒らしき缶を開けてぐいぐい飲んでいる。

「ほらお前らも飲むか」

そういうと、無月は缶をなげて弁慶に渡した。

「おまえらも飲むかって、校内で酒を飲むのはまずいだろ、っていうか未成年だろ」

「ちゃんと考えてる……ソイツはノンアルコールだ」
「ノンアルコール？」

確かに、見ればノンアルコール、運転も大丈夫なアルコール分０．００％の
ビール風味飲料水であった。

「紛らわしいことすんなよ……」
「まあ、お祭りだし、少しぐらい羽目外してもいいんじゃない？
　子供ビールもあるぐらいだし、ね」
「九羅香様は甘いんですね」
「紅葉も今日は堅いこといいっこなし」
「お姉様、それはいいんですけど、あの連中が静かすぎるのが不気味だとは思わないんです？
　あたしの目から見ても、かっぷるっぽい人たちが出てきたわよ」
「んー、今日はお休みなんじゃない」
「あの会長に限って〜そういうこともないとは思いますが〜」

「臨時ニュースをお知らせします南西から会長がカップルめがけ北上して来ます対会長班の人達は学外の人に迷惑かけない内に手早く仕留めましょう！繰り返します――」

勇姫が校内アナウンスを流す。
どこから情報を得たか、相変わらず謎な情報網の持ち主であった。

「むう、まるで発信器をとりつけられてるかのように情報が漏れているな」
「まるでというか、携帯電話を持ち歩いてるじゃないですか」
「それはそうだが、それでは携帯基地の情報を解読していると言うことになるぞ」
「物のたとえですよ」
「妙なたとえ方をするな」

襲撃路の途中、カップル、というより、ハーレムに近いコオルと召喚少女、そして京介のグループに
会長とさゆりの二人組が遭遇した。
コオル達は、京介が作った弁当をみんなで食べている最中だ。

「お花見といえば、やっぱりみんなでこうやってお弁当を食べるのが楽しいよね。
　沢山作ったから会長さんもどうぞ。」
「……たくさん作ったといっても、量に限度というものがあるだろう」

確かに、たくさん作ってあった……牛のえさと見間違うぐらいにたくさんあったのだから。

「京介一人でみんなの分を作った。それとは別に私がみんなの文を作ったから20人分ある。
　余ってるからおまえ達も食べるといい」
「横の連絡が全然とれてないですね、私たちはほっといてみんなに配ればいいのに」
「っていうか、あんたたちをほっとくわけにいかないのよね。いいからここで一緒に食べて行きなさいよ」
「え、えと……カップルさんの……邪魔は……しないほうが……いいと……思います……
　その……馬に……蹴られると……痛いですし……」
「おね〜さん、それは違うと思うけどな〜」
「ま、なんにせよ、食べるぐらいは食べて行きなさい。毒は入ってないから」
「まどか、それも失礼だよ。まあ、その……花見の会ぐらいゆっくりしたら？」
「会長、食べてからでもカップルの妨害はできるんじゃありませんか？」
「しかし、しっと団の団長としてはみんなの期待に応えねばなるまい」
「おねーさん思うに、彼女連れの時点で〜誰も期待はしてないわよ〜」
「彼女連れ？　誰が？」
「自覚ないんだ……」
「……？？？……」

本当に自覚のない会長であった。

その頃、B.S.Eは、黒で統一された忍び装束を身につけ、腕に数珠を巻き、厳粛な面持ちで花見に参加していた。

「なんだB.S.E。数珠なんか巻いて出家でもしたのか？」
「花見とは死者を弔う為の祭りと聞いているでゴザる。」
「なんでだよ。花見ってのは花を見て馬鹿騒ぎする祭りだぜ。死者を弔うなんて聞いたこともないぞ。誰から聞いたんだそんなの」
「桜の樹の下には屍体（したい）が埋まっているのでは無いのでござるか！」
「んなわけねーだろ」

玲奈のつっこみに言葉を失うB.S.E。どうやら本気で信じていたらしい。
そのころ会長は、くいすぎで動けなくなっていたとか。