途中経過はすっとばす。
とにかく、ワルプルギスの夜が東京に押し寄せてきたのである。

一般人には、突如現れた巨大竜巻としか見えなかったろう。
東京にそんなものが発生するなどとは考えられない、でも、あらゆる物理法則を無視するかのごとく
発生したのである。

原因？　そんなものを気にしている場合ではなかった、避難誘導に警察と消防はあたるので手一杯。

そんな中、人混みを避け、竜巻を待ち受ける一団があった。
言わずとしれた、魔法少女達とその仲間である。

「まあ、うちの結界があるから、魔法少女でなくても、ワルプルギスの本体も使い魔も見えるはずや。
　それでも一般人にはみえへんやろうけどな」
「……あ、あの……みなさん……ご無事で……」
「油断しちゃだめよ。みんな、今度の魔女は強力なんだから」
「わーってるっての、一番油断しそうなマミがいうんじゃねぇよ」
「あ、は、はい……」
「任せておけ、空を飛ぶ相手といえど、我が弓で打ち落とすことは、できる」
「僕らも切り札があるしね」
「大きく出たな、コオル」
「ほんとのことだもんね、まどか」
「うん」
「ま、おねーさんに任せなさい」
「……え、えと……油断大敵って……おねえちゃんに言われた……」
「ここまで来たら臆病の方が敵。自信を持つ」
「……は、はい……」
「使い魔はこっちに任せてお前達はデカブツに集中しろ」
「無月、頼りにしてるぞ。俺たちも使い魔班だからな」
「そうだな、弁慶。空が飛べない、飛び道具が使えない、だと
　どうしても使い魔相手になってしまう」
「まあ、使い魔をつぶすのも大切な仕事だろ、魔法少女と
　召喚少女は本体に集中しなって」
「ありがとう、みんな……あら、鹿目さんはどこへ行ったのかしら？」

その、鹿目まどかと、美樹さやかはというと、京介に引っかかって
避難所にいた。

「どこに行こうとするの、ここから動いちゃダメだよ。
　そういう勝手をすると、逆に周りを心配させるだけで足を引っ張ることになるから。」
「かってといっても、マミさん達も待ってるはずだし、私も魔法少女なんだから、やっぱりみんなと
　一緒に行かないと」
「んー、なんか私にできることって、あっちにないかなって思うんだよね。
　ここまでだって、犠牲者が出てないのが奇跡みたいなものなんでしょ」
「問題ないよ、こんな言い方をすると本人達は恥ずかしがるけど、弁慶くん達もコオルくん達も
　一度は世界を救った勇者様達だから、今度も問題なく帰ってくるよ。
　信じてあげなよ、必ずみんなが無事に帰ってくると信じてね。
　まどかちゃん達が信じてくれるのならば、絶対大丈夫。
　それより、避難所の人たちに温かい物をつくろと思うんだけど手伝ってくれないかな？その方が心配してココにいるだけより良いでしょ？」
「うーん、本当にそれでいいのかな」

本当にそれでいいのかどうか。
迷っている暇はなかった

「･･･御館様、こちらB.S.E.でゴザル。
　現在、弁慶殿達はワルプルギスの夜とやらと交戦開始でゴザル。
　まどか殿達は避難所に待機しているでゴザル。このまま両方の監視を続けるでゴザル。」
「まどか、戦闘が始まったって」
「ええっ？」

B.S.Eの報告は若干早めだった。今交戦は始まろうとしているところだったのだから。

無月は、楓達に頼んで術を付加した木刀を敵に向ける

「んじゃお前達の健闘を祈る……全員生きて帰るぞ」
「当然だ」

使い魔に弁慶達が切り込んでいく。

本体はまだ姿を現さない。

「使い魔相手なら楽勝だな」
「油断するな弁慶、使い魔は所詮使い魔にすぎない、本体はこれから現れるぞ」
「わかってるって、けど、使い魔をある程度叩いておかないと、本体は姿を現さないだろ」
「弁慶様、シューティングゲームのやり過ぎです」
「けど、本当にそうみたいよ。ほら、コアが出てきた」
「みたいだな……行くぞ、無想の一矢」

与一の矢がワルプルギスの夜の本体をとらえる。
だが、ワルプルギスの夜は何事もなかったかのように進んでくる。

「ま、こう来なくちゃおもしろくないってね、援護射撃頼むぜマミ」
「わかったわ」

マスケット銃を次々と取り出して射撃するマミ、その援護のもと、空を飛んでワルプルギスの夜に向かって接近するのは
佐倉杏子だ。

「そらよ、佐倉流超連撃でもくらいな！」

連撃を食らっても、ワルプルギスの夜はびくともしない。
ひたすら前進を続ける。ワルプルギスの夜は無敵じゃないかと思えてくる。

「まだまだ攻撃は始まったばかりよ。暁美さん、爆破を」
「あ、は、はいっ！」

マミが大型のマスケットを放つと、そこから巨大なリボンが現れる。
そのリボンはまるでワルプルギスの夜へと続くカーペットのようだ。
ここで暁美ほむらの特殊能力、時間停止が発動される。
このリボンの上を走ってワルプルギスの夜に爆薬を設置、それから走って戻って
時間を再開、発破っ！

「そんな……手持ちの爆薬はすべて使ったのに……」
「倒れる寸前まで元気に見えるだけかもしれないわよ。……佐倉さん、もう一度……」
「金剛の三矢！」
「与一さん！」
「迷うな！　手を休めるな！　考えるのは相手の弱点だけでいい！」
「……そうね、弱点だけ考えればよかったわね。……なら、一点集中射撃はどうかしら？」

マミはマスケット銃を取り出すと、一点に火力を集中して射撃を加える。

「まだびくともしない……」
「よし、射程に入った、行くよみんな」
「こちらは準備できてるわよ」
「ボクたちの出番だね」
「さあ〜いきましょう〜」
「ここからが正念場」
「……どきどきします……」
「響け５人のハーモニー……クインテット！」

５人の召喚少女が空に舞うと一斉にワルプルギスの夜に飛びかかる。
同時の一撃が入る。

「手応えはあったよ」
「でも、ダメージはどうかな」
「……無想の一矢！」
「え？」
「たたみかけろ」
「あ、はい……ティロ・フィナーレ！」
「佐倉流槍術、ロッソ・ファンタズマ！」
「……え、えと……」
「はっはっは、これを使いたまえ、ほむらくん」
「これは、スティンガーミサイルがトラック一台分……」
「会長、どっからこんなもの調達してきたんですか」
「それは気にするな、どうした、つかわんのか？」
「い、いえ、ありがたくつかわせていただきます。時間停止！」

ほむらは時間を止めると、スティンガーミサイルを次々と発射する。

「停止解除！」

ミサイルがワルプルギスの夜の前で炸裂する。

「よし、もう一度クインテットだ！」

ワルプルギスの夜は逆さまむきから、高度を下げながら正位置に向き直る。
どうやら、使い魔を作るのを止め、本体で勝負することにしたらしい。

「こっちは一先ず片付いたからな増援に来たぞ」

使い魔を片付けた無月が援軍にやってくる。

「今まで使い魔だけで体がなまってたところだ、俺たちも本体が殴れるとなれば話は別なんだよ」
「だから油断するな、本体が降りてきたということは、もっと何かほかの考えがあるということだぞ」
「九羅香様、しかし、我々でも手が届くところに来てくれたおかげで、我々も戦いに参加できるようになりました」
「そうだな、これで相互に援護しながら戦えるぜ」
「凡ミス即死だけはやめてよね、回復できないから」
「虫の息でもあれば、治療してあげますよ」
「リンクス先生？」
「手伝うとは言わないけど、みててはあげる」
「エイミィさん」
「こりゃ、恥ずかしい戦いはできないわね」
「そうだね、まどか」

明らかにワルプルギスの夜は作戦を間違えていた。
空が飛べるなら、絶対に空を飛んでアウトレンジする方が有利なのである。

ワルプルギスの夜が討ち取られるまで、そう時間はかからなかった。

「全員無事か？」

「はい〜無月さん〜おかげさまで〜」
「こちらも全員無事よ、手助けがなかったら、どうだったかわからないけど、みんなにはお礼を言わないと」
「お礼を言われるほどのことはしてないよ」
「お礼っていうても、とっくにキュゥべえの客になってるんやし、いまさらやからな」
「みねあは商売第一だな」
「まあな」

こうして、ワルプルギスの夜は滅んだ、しかし……。

「やあ、ワルプルギスの夜は滅ぼしたみたいだね、グリーフシードも回収したみたいだし、まずはおめでとう
「ありがとうキュゥべえ。ところで、まずは、ってどういうことなの？」
「ワルプルギスの夜ほどじゃないけど、それに似た魔女はほかにもいるってことだよ。
　またそういう魔女が東京に現れるときには、お願いしなければならなくなるね」
「まだいるんかい！」
「当然じゃないか、むしろ特別強い魔女が一体だけいる方が不自然だと思わないのかい？」
「うぅ、そりゃま、そうなんだけどさ……」

そう、第２、第３のワルプルギスの夜がまた現れないとは限らない、かもしれないのだった。

それがこの地球に現れるとは限らないのだが。