ここは、海鳴市の海岸。

なのはのたっての願いで、クロノとリンディに連れられたフェイトが

なのは達の元に連れてこられている。

 

逮捕された犯罪者という身分のフェイトでは、自分の意志で行き場所を決める、というわけにはいかない。

 

「……」

「フェイトちゃん……なんていったらいいか……」

「……」

「なのは、今のフェイトに掛けることばなんてないんじゃないかな」

「……心配、してくれてるんだ」

「うん……」

「そちらの人は」

「東京で出来た、私のお友達、かな。フェイトちゃんのことを相談したんだよ」

「……ずいぶん大きいお友達なんだね」

「うん……」

 

しばらく沈黙が続く。

その沈黙を破ったのは、無月だった。

 

「……俺も昔、両親を失ってな……俺一人だけが生き残ってもの凄く落ち込んで少し回復しても今度は荒れて手が付けられない状態だった事があった」

 

「……」

 

「今は思いっきり泣いとけ泣きたい時に泣けないのは辛いしな俺に言えるのはこれ位しかない」

 

「……ありがとう」

「……家族がそろってる私の出る幕じゃ、なかったかな」

「そんなことはないよ。……なのはの気遣いも、うれしかった。

　だけど、……」

 

「君はもう、一度二人に会いたいかい?」

 

ここで、もう一人の大きいお友達、修吾が口を開いた。

 

「方法はあるが、決めるのは君自身だよ」

「方法って、どんな方法があるの？」

 

修吾は、降霊術が使えると説明する。

時間も限られるし、依代が修吾自身にはなるので

本人が現れたのかどうかは、修吾自身を信頼するか

どうかにかかってはいるが、本物の降霊術であると

修吾は説明した。

 

「……私は……アリシア姉さんに会いたい。

　アリシア姉さんは、何を考えてたんだろう。

　クローンの……コピーの私を見て……どう思うのか、それを知りたい」

 

修吾は、わかった、という風にうなずくと、アリシアの霊を呼び出した。

 

「……フェイト、……あなたが、私の妹になるのね」

「私が、あなたの、妹？」

「ママにお願いしたことがあるの。私、妹がほしいって。

　約束、覚えていてくれたんだ。よかった。

　……何か事故が起きて、それから先のことは何も覚えてないけど

　ママが約束を守ってくれて、本当によかった。……けど

　もう私は行かなくっちゃ。あなたはこの世界で生きて。

　まだ、私が行く世界に来るには早すぎるわ。

　そして、私の代わりに……ううん、そうじゃなくて、あなたの

　人生を全うしてね。……私の大切な妹、フェイト……」

 

修吾は、ぐったりと疲れたように倒れた。

それでも、気力を振り絞って、プレシアを呼び出すかどうかフェイトに尋ねる。

 

「……ううん。もう……十分。

　母さんが私のことをどう思っていようと……私は、私なんだって

　アリシア・テスタロッサの妹、フェイト・テスタロッサとして生きていていいんだって

　そう思えるようになったから……だから、もう、いいの」

「フェイトちゃん……」

「ありがとう、修吾さん」

 

修吾は、黙ってなのはを指さす。

 

「なのは、ありがとう。……気遣って、くれたんだ」

「うん、フェイトちゃんのことが心配で……私……」

「どうして、そんなに私のことを心配してくれるの？」

「どうして、かな？　友達になりたいって、そう思ったから……それじゃだめかな」

「ううん、そうは思わない。だけど、私は友達なんて持ったことないから……」

「……大丈夫、友達になるのって、簡単だよ。すごく簡単」

「簡単？　どうするの」

「名前を呼んで。それだけでいいんだよ」

「なのは」

「フェイトちゃん」

「なのは」

「フェイトちゃん」

 

こうして、一つの事件は終わった。

なのはとフェイトの友情は、また別の物語となる。