「今までのところ、平穏に過ごせてるなぁ」

「そう願いたいわね。みねあ、けど、ずっと平穏ってわけには行かないと思うわよ」

「けどな、人目につかんようにって考えてる相手みたいや。これだけ人目を

　集めたら、そう簡単にはこれへんやろ」

「だといいけど……」

「ところで、会長はどないしたんや」

「別に私は会長の子守というわけじゃないわよ」

「けど、いつもつるんでるやろ、なんか理由があるんちゃうん」

「何の理由もないわよ。ただ単に、神機の見張りをやるのに、仮の姿が

　あったほうが便利かなって、そう思って同好会に入っただけ」

「仮の姿っちゅうか、変なところに入ってしもうたなぁ」

「それはあたしも思うわ。けど、動きやすいのも事実よ」

「なんで」

「何やっても、サバイバル同好会だから、ってことで納得してもらえるもの」

「あきれられてるっちゅう言い方もあるけどな」

「……まあ、素直に天体観測でもやりましょ。見張りっていっても、どうせ

　それぐらいしかすることないんだから」

「そうやな。それにしてもきれいな星空やなぁ」

「明るい星しか見えないけど、それでも星ってきれいなものね」

「あの北極星のところに見えるのがこぐま座で、西の方に輝いて見えるのは、

　はくちょう座のベガとこと座のデネブでござる。」

「あれ、B.S.E。なんでそんなこと知ってるの」

「忍たるのも夜間の任務に置いて自分の位置を知るの為に必要な知識でゴザる。

　拙者は一流の忍者でゴザるからこのくらい何でもないでゴザる。

　ただ、こう天気が良いと忍びとしては任務に支障がでるので悩みの種でもあるのでゴザるよ。」

「ふーん、まじめな忍びの修行もしてたんだ、ちょっとびっくり」

 

ちょっとずれてるだけで、いつでも当人は大まじめに忍びの修行をやっているBSEであった。

 

一方、修吾はといえば、防寒着に双盾装備で夜空を見上げていた。

 

「それにしても気にしていなかったがそれなりに見えるものだな」

「……え、ええ……そう……です……ね……何事も……なく……無事に……終われば

　……いいと……思うん……ですけど……」

 

みあは、心配していた、何かが起きるんじゃないかと。

心配するのも当然、ねらわれてるのはみあなのである。

 

そんなこんなで夜が更けてきた頃、京介は芋煮をもって現れた。

 

「みんな、芋煮ができたよ。

　今日は寒いからこれを食べて暖まってね。」

「あ、ありがとう、京介さん」

「ありがとね」

「ありがとうです〜。おいもさん大好き〜」

「……まあまあの味付け。８０点」

「……えと……その……あの……ありがとう……ございます……」

「ありがとー京介さん」

 

召喚少女にコオルも、こっちの世界の夜空を見上げている。

 

「こうやって秋の夜空にみんなで集まって食べるのが一番美味しいよね。」

「そうだね。……こっちの世界の月って不思議だな」

「何が不思議なの？」

「だって、毎日形を変えるんだもの」

「そういえば、キミの世界って、月は空の割れ目みたいになってて、形も変わらないよね」

「本当に空の裂け目なんだけどね」

 

星ではなく、月のことで話が盛り上がる。

そんな中、最初に異変に気づいたのは、修吾だった。

 

「ふむ…金色に光る星は有ったっけかな…」

「あ、流れ星、お願いしなきゃ」

（………）

「あら〜あの流れ星〜かなり変ですね〜」

「どうしたの、マキさん」

「だって〜あの流れ星〜まだ消えてませんよ〜」

「言われてみれば……」

 

流れ星はそのまま空を横切り、そして急に姿を消した。

 

「……え、えと……」

「みあ、どうしたんや？」

「……な……なんだか……迷ってる感じがします……」

「迷ってる？」

「え、ええ……赤毛の……狼と……黒服の……女の子が……空に……」

 

なるほど、月明かりで、ぼんやりと狼と人影が見える。

しばらくみあ、みねあ、さゆり、そして天体観測に来た人たちと目が合うと

やがて、女の子と狼は、そのまま姿を消した。

 

「……消えた……」

「人目を集めたらなんとかなる、っちゅう推理は、今のところ当たってるみたいやな」

「けど……その……あの……」

「けど？」

「……次も……うまくいくとは……限らないかも……」

「……そうやな……」

「頃合いもいいみたいだし、そろそろお開きにしない？」

「賛成や。……いずれ、この件について、ちゃんとした説明もせなあかんやろうけど

　今はその時やないからな」

 

こうして、天体観測は、謎の少女と狼の姿を残して、終わることになった。

 

「何かが動き出したみたいだな…さて、どうなるか?」

 

修吾はつぶやく。確かに、何かが確実に動き出していた。

 

一方の京介はというと、天体観測の片付けが終わってから

晶を誘ってノンビリと星座作り遊びを始めていた。

 

「今日も手伝ってくれてありがとう。

　せっかく天体観測に来たんだし、ゆっくり星を見ようよ。

　この星とこの星をこう結ぶと･･･猫みたいでしょう。

　晶ちゃんも星座をつくってみない？」

「星座作りか……じゃあ、あの星とあの星をつないで包丁座」

 

なんとなく、楽しそうな二人であった。