ここは、時空の歪みが感知されている公園。

 

「私たちが帰還するときも、ここに来ることが多いよね」

「そうだねまどか。けど、それと、歪みと関係あるの?」

「関係あるから〜しらべてるんじゃ〜卯月」

「素人が考えるのは時間の無駄。さっさと状況を把握する」

「…お、お姉ちゃん…そんな、けんか腰に…言わなくても…」

「結は甘過ぎ。危険に巻き込んでることを自覚してもらわなくては」

「ま、嬢ちゃんの言うとおりだな。コオルと綾子は員数に入れてるんだが

　嬢ちゃん達にとっては、不要な危険かもしれん」

「…けど、ありがとう、手伝ってくれて」

「お礼には及ばないわよ。…報酬は、かかってるし」

「報酬って？まどか、それって？」

「あーあーなんでもない」

「どうしたのあわてて」

「何でもないってばっ！それより、早く私たちを”召喚”してよ。

　さすがに生身じゃね…」

「そうだね。じゃあ、今から携帯電話を使うよ」

 

召喚少女５人が登場である。これで、コオル達は戦闘準備完了だ。

 

「よし、これで大丈夫なはず…」

 

そこに現れたのは、修吾である。

 

「うちはアデルバートさんの警護をするよ

　それと以前使ったイヤホンを渡しておくよ」

「そうか、…けど、危険だぞ」

「危険はみんな承知してるはず。覚悟出来てない人は、ここには来てないよ」

「だといいがよ」

「とりあえず…万が一結界張っても調査は出来ますか?」

「結界か?…悪いが、そういうのはなしにしてくれ。

　結界張って何か出来るんだったら、何もおまえ達に頼んでない。

　俺だけでも、結界は作れるからな。

　今回は、そういう甘い状況じゃないんだ。

　歪みの中にあるものを引っ張り出そうってんだからな。

　この公園と、俺達の世界〜リドラスヘイド〜とで、何かがつながってるのはわかる。

　ただな。その途中にあるものは、決していいものじゃないんだ。

　…と、話が長くなったな。護衛は頼むぜ。俺も、空間の歪みを引っ張り出すので

　全神経を使うからな」

 

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同じ頃、京介と九羅香達は、もっと別な、そしてありきたりな危険に対処していた。

 

「ほら、今日は工事があるから立ち入り禁止」

「ちぇー、けち。ちょっとぐらい入らせてくれてもいいじゃない」

「そーだそーだ」

「あの、二人とも、工事現場は危ないんだから入らないでください」

「危ないところには行かないから大丈夫だよ」

「…でも…」

「九羅香殿、紅葉殿、なにをしている」

「あ、与一、いいところへ。子供達がどうしても遊ばせろって

　言うことを聞いてくれないんだよ」

「…難しい問題だな。泣く子と九羅香殿には太刀打ちできない」

「ちょっと、それじゃまるで私がだだっ子みたいではないか」

「あまり変わらない」

「…そこで断言しなくても…」

「二人とも、怖い物はしらないのだな」

「…どういうこと？」

「お化けとかで脅そうったってだめだぞ。怖い物…」

 

次の瞬間、子供達の表情が固まった。

与一が、矢を子供達の頭に、擦過音がするほどぎりぎりの位置を通るように

放ったからだ。

 

「…恐ろしい、というのは、こう言うのを言うんだ。わかるか?」

「子供相手にそんなもの使うな」

「そーだそーだ」

「人間なら、子供相手に手加減というのもあるかもしれん。

　だが、事故は子供だからといって手加減は、ない。

　わかるな？」

「…」

「……」

 

与一の目が真剣なものであることは、子供達にも伝わった。

次は、当ててくるだろうということも。

 

「う、うちのお母さんにいいつけてやる」

「べーだ」

 

それでも、捨て台詞を忘れないのは立派である。

きっと将来は立派なやられ役になるだろう。

 

「こらこら、そういう言い方するものじゃないよ。

　けど、ありがとう与一。おかげで助かったよ」

「子供に理屈は通用しない。体で理解させなければな」

「…子供達も、話せばわかると思うのですが…」

「時間を掛ければそうかもしれん。だが、今は時間が惜しい」

「そうだね。与一の言うとおりだ。いつ、実験が始まるかもわからないんだし」

「あら、京介様から電話です」

「その場所から先は携帯電話がつながらないから、公園の西側にの場所をお願い。

　そっちには九羅香ちゃん達に向かってもらうから･･･あと、絶対に無茶したり怪我したりしないでね。」

 

京介は、楓の式神や、玲奈の忍ねこを使った公園内の偵察

偵察結果を地図と照合してその結果と各員の担当を全員に連絡する係をしていた。

いわば、偵察本部というわけだ。

 

ちなみに、電話でなら何とか晶と会話できるくらいまでに落ち着いた（笑）京介だった。

 

 

「…ですが、本来なら、ここはすべて携帯電話の圏内のはずなのよね。

　電波が途切れるということ自体が異常だわ」

「だからこそ、調査が必要なんだろ」

「そうですね〜。さきほど〜与一さんから報告がありましたけど〜

　子供達や〜おっきな子供達や〜モンスターピアレント系の人たちが〜

　勝手に公園内に入るのを〜なんとしても〜阻止しなければ〜」

「静、なんか上手いはないのかよ？しらみつぶし以外方法がないってことはないだろ」

「いくら私でも〜こういうことは〜目をしっかり開けておく以外〜手の施しようが〜ないですよ〜」

 

敵が相手なら殲滅すればいいが、敵でもない相手となると、さすがの

静にもお手上げだった。

だからといって、自業自得と切り捨てるわけにもいかないのである。

 

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あくびをしながら、それでも真剣なまなざしをしてるのは、無月であった。

昨日のことをふと思い出す。

 

「いらっしゃいませ」

 

彼は一人暮らしである故に夏休みは稼ぎ時なのでとても忙しいのだ。

公園の警備のボランティアを買って出た日の前日も、また、一生懸命

アルバイトをしなければならない身分なのである。

 

さらに、アデルバートと打ち合わせたときの記憶がよみがえる。

 

「連絡なら携帯で出来れば良いが俺の間では何らかの原因で

　出来ない可能性もある気がする念の為に連絡できる術とやらは無いだろうか？」

「そんな器用な魔法はないな」

 

…一言である。確かに、そんな器用な魔法が存在するのなら

アデルバートが一番に使って、リドラスヘイドと連絡を取ってるだろう。

 

「けどな。伝書鳩代わりになる呪符なら用意できるぞ。

　やばいことがあったら使ってくれ。…まあ、それで来るのが

　例の会長にさゆりだから、本気で使えるかどうかは不明だけどな」

 

いや、あの会長はともかく、さゆりは戦力として計算出来るだろう。

ともかく、無月は、公園内の警戒を続けていた。

 

---

 

「さて、綾子、コオル、そろそろ始めるぞ」

「う、うん…」

「…魔力っていうより妖力だなこりゃ…これじゃ、グレートボイドの

　影響で魔族の土地が汚染されたってのも、冗談じゃないみたいだ」

「…冗談だと思っていたのか?」

「ああ？族長さんか。…多少は本当のことだとしても、過大な

　言い方だとは思ってた。…こんな妖気にさらされたんじゃ

　ネズミ一匹いきのこれないかもしれないな…よし

　人工的にボイドを作るための魔法陣が出来た。

　あとは……」

 

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最初に気づいたのは、無月だった。

 

「………何か変な感じがするな」

 

そう、公園全体に広がった歪みの影響で

アデルバートがひらいたゲート以外にも

空間を転移して現れる何かがあったのだ。

 

「はっはっは、土佐坊俊昌ただ今参上」

「あーあー術のテスト中…本日は晴天なりと　ポイントＸで雑魚Ｂ（土佐坊）に遭遇…

　…これより殲滅する」

「なめるな、このわしを誰だと思っている！」

 

土佐坊は無月につっかかっていく。

 

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同時刻

 

「さて、ここは通行止めだぞ」

 

現れた妖魔を相手に修吾は戦いを始めた。

妖魔といっても、レベルが低い。

修吾１人に追い払われていく。

 

だが、なにぶん数が多い。

 

「ほーほっほっほ。こんな事もあろうかと私たちが待機してましたわ」

「アレク、うるさい」

「まったく、非合理的な連中です」

 

いや、おまえが言うなリンクス。

もとい…三魔将が修吾に加勢する。

さすがに三魔将を相手に勝てるほど妖魔の能力は高くない。

鬼門もろとも次々と撃破されていく。

 

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「噂には聞いていたが……本当に雑魚だな」

「無・無念…」

 

土佐坊は、あっさりと無月に負けていた。

弱い、弱すぎるぞ土佐坊。

 

「なんだ、押っ取り刀で駆けつけてみたが、もう終わりか。

　どうやら、私に恐れをなして降参したようだな、はっはっは」

「その無意味な自信はどこから湧いて出るんですか」

「まあ、気にするな、それより一般人がここに入ってこないよう

　パトロールに入るぞ」

「あなたも十分一般人の能力だと言うことをお忘れ無く」

「それではまるでさゆり君がモンスターみたいではないか」

「だれがヒラリークリントンですか誰が」

「いや、そんなことはいってないぞ…」

 

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「まどか、いま回復するから」

「あ、ありがとう」

「想像以上の妖気が噴きだして来やがった。

　綾子、俺のパーソナルディフェンスは頼む」

「あなたはなにをするんです？」

「一旦ゲートを閉じる。…コオル、それまでに逃げ出した

　モンスターの殲滅は頼むぞ」

「う、うん、わかったよ父さん」

 

召喚少女達の実力をもってすれば、確かに、モンスター退治は

そこまで難しいことではなかった。

だが、魔力…というか、妖力の源泉に近いだけあって

モンスターの耐久力、攻撃力ともかなり上がっていた。

 

「キミは下がってて、前に出てるとカバーしきれないから」

「卯月、そこまでいわなくても…」

「…コオル、あれを使って一掃する、全員に支援を」

「あれって？」

「ああ〜あれね〜」

「…確かに…お姉ちゃんのいうのが…正解…」

「よし、あれで決めよう」

「キミ、お願い…あれだよ」

「…ああ、あれか…わかった、みんな、僕に力を」

「１人はみんなのために」

「みんなは１人のために」

「今奏でる」

「５つのエレメントの協奏曲」

「今こそ響け、エレメンタル＝クインテット！」

 

５人の召喚少女の力が一気に解放される。

モンスターの一群が、その力の奔流の中に飲み込まれ…そして、消滅した。

 

「よくやったなコオル。…こっちも、なんとかボイドは封じた。

　だが、…やっかいだな。この結果は…」

「何がどうやっかいなの、父さん」

「どうやら、ボイドの向こうにあるのは、とんでもなく邪悪な

　何かみたいだ。…こいつは、あれの手助けを借りる必要があるな」

「あれって？」

「…神機」

 

そういうことだった。

もはや、状況は、天才アデルバート１人の手に余るほど

深刻になっていたのだ。