ここは、図書室、静と兵藤誠士が一緒に、今井四郎兼平の情報を探している。

 

「さてと、この膨大にある図書館から今井四郎についての書物を
　探すわけですがとりあえず手分けして探しましょうか。」
「そうですねぇ〜私も〜兼平さんについては〜知らないわけではないですけど〜
　あまり〜おつきあいしたことは〜ありませんから〜」

 

そうなのだ、静は都で有名な白拍子、つまり、平氏の人物や、源氏の嫡流についてならわかるが
木曽、つまり、今の長野の豪族の今井家の人物についてはほとんど知らないのである。
兼平についても、むしろ現代の文献が頼りなのだ。

 

しばらく、文献を読みあさる。

 

「とりあえず、こんなものですかね。早いとこ生徒会室に戻りましょうか。
　他の連中の動向も気になりますし。」
「……………兼平さんについて〜調べてみましたけど〜
　〜義仲さんの〜盾になる方なんですね〜」
「それで？」
「なら〜義仲さんを襲撃すれば〜自然と〜兼平さんに乗り移られた〜
　鎌田さんが〜盾になるわけですから〜鎌田さんが〜取り戻せますよ〜」
「なるほど。それは妙案かもしれませんね。やってみるとしましょう。」
「ですけど〜義仲さん達の居所が〜わからないと〜絵に描いた〜餅です〜」

 

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全くその通りではあった。
鎌田を救出するのも、神機を取り戻すのも、はたまた長野先生達を
連れ戻すのも、基本は同じなのである。

 

「とりあえず、自分が得た情報は能登先生の近所の心霊スポットで
　長野先生に似た人を見かけたってくらいですね。」

生徒会室で報告しているのは、狛呂だ。

 

「それで、どうするの？」

 

美沙が狛呂に聞いてみる。

 

「自分はもう少し聞き込みを行ってみます。」
「何かわかったら、すぐに教えてくださいね」

 

紅葉が声を掛ける、紅葉は、九羅香から、学校の守りを任されている都合上
生徒会室を離れるわけにはいかないのだ。

 

「そう簡単には目撃情報が集まらないか･･･

　購買に行ってみるか。前回のこともあるし。」　

 

狛呂は、情報が集まらないので情報が集まりやすい購買へ赴くことにする。

「みねあさん、早速聞きますけど長野先生たちの目撃情報とか転がり込んできてませんか。」
「そんなんわかったらうちから連絡するわ」

「そうですか･･･そういえばあれからなにかありましたか？」
「…あ、あの……その……あ、さっき……美沙……さんから……携帯電話が……
　…あり…まし……て……その……あの……静……さんが………
　たぶん……あの……長野先生……の……いそうな……場所……を……
　…………その……奇襲……して……やれ……ば………あの………
　たぶん………きっと……鎌田…さん……が……囮を……買って…出る…
　…の…で……その……あの……鎌田……さんなら……救出は……出来る…はず…
　…だ……と……それで……その………神機の……ありか……でし……た……ら……」
「みあ、…リミッター解除、レベル０からレベル１、サーチ対象神機」
「…あ、ありがとう……ござい…ま……す……」
「どうや？見えたか？」
「…あ、はい……ぼんやりと……です…けど……」
「みあ、リミッターレベル１よりレベル０へ移行」
「了解、レベル０に戻ります…」
「みあ、すまんけど、方向と距離をこの地図で示してくれへんか？」
「あ、はい……今までだと……あんまり……拾え……無かった………ん……です……が……
　妖気が……今までより……強く……なって……その……大体……」
「ええから、どっちにどこらへん？」
「あの……ここら当たり………」

「そうか、ありがとなあ。…このあたりで、隠れ家になりそうな場所に心当たりあらへん？」

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みあのサーチのおかげで、どこらあたりを探すべきか大まかな見当はついた。
すぐに狛呂は生徒会室に報告に戻る。

 

「ありがと、風峰先輩、すぐにみんなにメールしとくね」

 

美沙が捜索班に即今まで得た情報をメールで送る。
…そして、待つ身には、もはや天にすべてを任せるしかない。

 

「とりあえず、こちらでできる事はないようだな。あまり気を張っても
　仕方がない。お茶にでもしないか？入れるから。何を飲む？」

 

気を利かせてるのは、誠士である。

 

「緑茶をお願いします」
「なんでもいいけど、それじゃ困るんだったら紅葉先輩と同じで」

 

てな調子である。まあ、美沙は、すでに生徒会室にある
茶菓子を並べてたべてるまっさいちゅうだが。

「わかった。少し待っててくれ。」

 

誠士は、生徒会室の電気ポットのお湯でお茶をいれはじめた。

 

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さて、一方こちらは情報をもらった捜索組である。

 

「拙者、今井兼平殿を説得し、鎌田殿を帰してもらってくるでござる。」

 

･･･と、言って彼の向かったところは、今井兼平の墓だと伝えられる長野市川中島に兼平塚。

 

「ええい、今井兼平殿、ここにいるのは判っている。

　現代に黄泉返るなどという武士らしくない事を････な、放せ、拙者は兼平殿と話が･･･」

 

あやしげな装束で、木に登り騒ぐ怪しげな人物。
怪しげな装束はともかく、木に登って刀らしき物をもっていれば
警察に捕まるのも致し方ない。

 

刀の方は、こんなこともあろうかとおもちゃだったので事なきを得たが
油の方はこってりと絞られたようだ…って、あれ？

 

どっかの同好会の会長なみに怪しげな人は、見なかったことにしておこう。

 

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改めて、情報をもらった捜索班である。
観月班と楓班は、残留情報収集組の情報を受け、合流して
救出作戦発動に取りかかっていた。

 

「住宅地図を見る限り、幽霊屋敷にいる、ってことで間違いなさそうだな」
「なんのひねりもないんですね」
「ま、神機の封印なんて解いてれば、普通の人間にだって禍々しい感じは受けるでしょうね」
「戦力を集中できてよかったじゃないか。あとは、やっつけちゃえばいいんだろ」
「転移されなければいいんですけどね、いくら楓様や観月さんでも
　神機の転移を阻止するのは難しいでしょう」
「…そうですね。神機の転移を封じる手段は…私にも…思いつきません」
「観月様…」
「考えても仕方ないよ。まず、今回は、鎌田の身柄の確保からだ。
　不意打ちは期待しないけど、全力で行くよ！」
「おう！」

 

確かに、不意打ちは期待するわけにはいかなかった。
見事なまでに、妖魔達の襲撃を受けてしまってはどうしようもない。

「……どうやら俺達は連中に誘い出されたみたいだな」
「みたいね無月」
「楓様、そんなことより…」
「わかってるわよ」
「楓、源九郎、与一、妖魔の足止めを頼む」
「九羅香殿は？」
「残りで、本拠をつくよ。妖魔を潰すだけじゃ、たぶん潰し終わるころには逃げられてる」
「わかったわお姉さま。気をつけてね」
「まだ…転移はしてないように感じます」
「よっしゃ、それならあたしの出番だな。すぐに鍵を開けるぜ…と、ほらあいた」

 

いわゆる、お化け屋敷の中へと九羅香達はなだれ込む。
その中には…1人の人物しかいなかった。

「どうやら少し遅かったみたいだな…だがすまないが鎌田を返して貰うぞ」
「鎌田？鎌田とは誰のことだ。我が名は樋口次郎兼光…」
「兼光の方かよっ！」
「義仲殿の四天王の1人か。相手にとって不足はないっ！」
「巴様と義仲様はいずこへ？」
「お二方はすでにここにはおられぬ。
　いや、はじめからここには来ておられぬと言うべきか」
「どういう事…いや、そうか、謀ったな！」
「そう言うことだ。ここが貴様らの死に場所よ！」
「グッ……か……身体…が」
「どうしたんですか無月さん…」
「ちっ、急がないと」
「？何をするつもり修吾」
「かのものの御霊をこの玉の中に…ハァ!」
「…無茶するわねあんたも」
「楓？」
「あの程度の妖魔なら、我らでも簡単に退治できるということだ」
「我らでもっていうか、結構苦労したんですよ。
　弁慶さんたちにつっかかっていく妖魔が大半だったおかげで
　鬼門の方は簡単に封じれましたけどね」
「源九郎、あんたねぇ…ま、無事でなによりだわ。
　だけど、こっちが無事じゃなさそうね」

 

楓の言う、こっちは、確かに少し無事ではなさそうだった。

 

「クッ……ハァ…ハァ……俺は……一体何を？」
「何、ということではありません…どうやら、私と変わらない何かがあるようですね、無月様」
「どういうことなのですか？観月さま」
「私にもまだわかりません。ですが、何らかの妖気に当てられたようには見えます。
　しばらく休んでいてください…私と楓様とで、邪気を払いますから」
「鎌田さんの看病は私の仕事ですか…まあ、いいですけど」
「そういうな源九郎。鎌田殿も、特に外傷はないようだ」
「で、一体何が起きたんだ、俺には全然わけがわからない」
「魂封じの術よ。ま、体にうまく居着く魂じゃなかったみたいだから
　綺麗に剥がせたみたいね」
「……奇妙な話だな」
「どうしたの与一」
「なぜ、体にうまく居着く魂でないものを、わざわざさらってまで…」
「それは、謎だね。私たちの襲撃を予測していたのに、なんで
　ねらい通りの兼平じゃなくて、兼光だったのか」
「神機が使いこなせてないんじゃないのか」
「だといいけど…」

謎は残る物の、ひとまず、鎌田の奪回という目的だけは果たせたようだった。
しかし、長野先生と、鈴木の手がかりは、未だになにも捕まえられなかったのである。