泪の両親は共働きなの。私の家と一緒なの。
仕事も平日は遅いの。だから、今は霰おばちゃんと泪と私の３人だけが
泪の家のリビングにいるの。

「それで、霰おばちゃん、話ってどういうこと」
「何から話すべきか悩むんだけど、私が聞いた話をそのまま
　時系列ごとに伝えるね」
「どういう話だったの？」
「私がアメリカに飛んで、DICE本部に行ったら、園宗寺さんとP-8、
　それから、もちろん、ボディガードの忍くんが居たんだよ。
　で、園宗寺さんが話してくれたんだけど、どうやら、地球は異世界人と遭遇したみたい」
「遭遇したみたい、って、どういうことなの？」
「いろいろ園宗寺さんは説明してくれたけど、はしょって言うと、時空管理局を名乗る組織の代表が
　接触してきたって話らしいよ」
「時空管理局？　タイムパトロールみたいなものなの？」
「霧子がいうほど立派な組織かどうかはわからないって園宗寺さん言ってたよ。
　彼らが言うには、地球の軌道上で時空船が謎の故障をしたんだって。
　その後乗員乗客は救助したけど、積み荷の一部が地球に落下したから
　それを回収したいって言ってたって」
「それって、どんなものなの？」
「エネルギー結晶の一種って彼らは言ってたそうだよ」
「そうだよって、霰おばちゃんは会ってないの？」
「そうだね。彼らが接触したのはDICEじゃないから、園宗寺さんも伝聞でしか聞いてないみたい」
「そうなんだ」
「ともかく、どうやって、何を回収するのかよく分からないから、許可も拒否も保留になってるって園宗寺さんは言ってた」
「そのエネルギー体って、ジュエルシードって名前かな」
「泪、なんでその名前を知ってるの」
「さっきまで戦ってた女の子が言ってた」
「そうなんだ。その子も時空管理局の一員なのかな」
「わかんない。何も言わなかったから。でも、力ずくで集めようとしてるみたいだったよ」
「もし、その子が時空管理局の一員なら、協定違反だね。
　時空管理局の代表を名乗った相手は、結論が出るまで何もせずに待つって言ってたそうだから」
「待たないのかな」
「それは分からない。その子が時空管理局の一員かどうかも知らないんだから」
「こんど会ったら聞いてみようか」
「会う予定あるの？」
「どっちにせよ、野良ディゾナントは退治しないといけないとおもうの。
　その、野良ディゾナントから、ジュエルシードを拾ったの」
「ジュエルシードって、手に入れたんだ、どこにあるの？」
「アインハルト先生が、空木教授のところへ回すって言ってたから
　今頃はヘルマン・アインハルト研究所じゃないかな」
「そっか、私もどんな物か見てこようっと」
「見てからどうするの？」
「霧子には悪いけど、私は時空管理局を名乗る組織相手に待機しないといけないんだ。
　野良ディゾナント狩りの方が楽しそうなんだけど、やっぱ仕事は優先しないとね」
「パパやママにはなんて話せばいいの？」
「なんてって……聞いたとおりの話をすればいいんじゃないかな」
「そうじゃなくて、私達が野良ディゾナントを探して回るって言ったらどうなるかなと思ったの」
「間違いなく危ないよ」
「だけど、野良ディゾナントも野放しにすると危ないの。
　誰かが探して退治しないといけないの」
「……ディゾナントの一種を作り出すの？　そのジュエルシードって」
「そうだと思うの。私達は一回それに遭遇したの」
「そっか、だけど、トーヤやオリジナルはなんて言うかなあ」
「ねえ、霰おばちゃん、DICEのエージェントは頼れないの」
「DICEは時空管理局に対応して待機って決まってる。
　人手はいくらあっても足りないから、こっちには回せないかな」
「それじゃ……」
「もし、野良ディゾナント狩りがしたいなら、両親の許可は得てね」
「うん、それはそのつもりなの」
「その野良ディゾナントって、強いの」
「わからないね。遭遇した相手が格外に強いのなら雑魚だし
　むしろ弱い部類に属するのなら、歯ごたえのある相手だと思う」
「油断しちゃだめだよ」
「うん、分かってるの。まずはパパやママに相談してからにするの」
「そっか、なら私がどっちにしろなんて言うことじゃないよね」

話も長くなって、日は暮れてしまいました。

「霰おばちゃん、家まで送って欲しいの」
「うん、私からもお願い」
「んーと、早くDICEに戻るようには言われてるんだけど
　ま、送っていくぐらいならいいか」
「ありがとうなの」
「他に話しておくべき事はなかったかな……
　まあ、なんか思い出したらメールするから」
「お願いするの」
「じゃあ、気をつけてね、霧子、霰おばちゃん」
「では、失礼するの」
「じゃあね〜」

霰おばちゃん一人なら、跳躍して行けばいいのかもしれませんが
私はそんな能力がないので、霰おばちゃんと一緒に歩いて帰ります。

「霧子、霧子はもう決めてるみたいだね」
「え？　何を？」
「ジュエルシード集めはするんでしょ」
「うん、野良ディゾナントはほっとけないの」
「それだけかな」
「どういう意味なの？」
「わかんなきゃいいか」

霰おばちゃんが何を言いたいのかは分からないの。
だけど、DICEのエージェント達が集めてくれないのなら
私達が集めても悪いことはないと思うの。

それにしても、異世界人が本当にいるとは思わなかったの。
異世界人達は私達に友好的かどうかは分からないの。
友好的だといいと思うし、こちらの返事を待ってくれるなら
たぶん、友好的なんだと思うの。

返事を待ってくれない子もいたの。
あの子は、一体だれなの？

 

 

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