お客様番号：０２３　フローネ・トリーティア


　「ごめんね、ねこちゃん」
　「シンシアねこじゃないよ〜」
　「ルシードさん、どうしてもねこをおけないなんて言うから・・・・
　「うみゃあ、めろでぃ、ねこじゃないですぅ」
　「ひどいですよね、ねこはだめだって言うのに
　　ティセさんはおいてるんですよ」
　「…ルミナはねこじゃないです」
　「ごめんなさい、ねこちゃんたち」
　「俺はねこじゃねぇ！」

　最後の最後まで誤りを訂正しないフローネであった
　もっとも、フローネにとっては、動物も、人間も、
　同じように友人なのかもしれない

　「あの、これ・・・どうぞ」

　ふとフローネが気がつくと、目の前にピンクの髪とその中から飛び出した
　うさみみが印象的な少女がいた

　「なに、うさぎさん？」
　「ボクうさぎじゃないのに・・・・」

　うさみみ少女が差し出したチラシには、次のように書かれてあった


  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

                           ちょっとした悩みがあるとき
                         ほんの少しの手助けが必要なとき
                   そんなとき、私たちのことを思い出して下さい

    Ｍｙｓｔｉｃａｌ　Ｍｉｒａｃｌｏｕｓ　Ｍａｇｉｃｉａｎｓ　Ｃｏｍｐａｎｙ

             ・・・・・・・いつでも、あなたのそばに・・・・・・・・

  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


　「魔法使いの会社なんですか？」
　「うんっ（はあと）」
　「・・・・・・・・・・そうですね、なにか参考になるかもしれません
　　ありがとううさちゃん」
　「だからボクはうさぎじゃないってば！」

　言うまでもなく、フローネがうさみみ少女の抗議を聞いているわけはなかった

　というわけで、ここはＭＭＭＣ魔法商会

　（からんからん）

　「いらっしゃいませ」

　いつものように、営業用スマイルのみねあが応対に出る

　「あの・・・ここは、なんのお店なんでしょう？」
　「うちらは魔法の何でも屋をやってるんよ
　　魔法で解決できることなら何でもいうてみてや」
　「でしたら・・・あの、動物を飼いたいんです」
　「なんやアパート住まいなんか？」
　「ええ・・・まあ、そんなところです」
　「そうやなぁ・・最近は動物の飼えるアパートも増えてるさかい
　　そういうところへ引っ越すのも一つの考えや
　　住宅情報は当たってみたんかいな？」
　「いえ・・その・・・・」
　「・・・・引っ越しできへん事情でもあるんか？」
　「あ、はい・・あの、私住み込みで働いているんです」
　「そうやったんか、かわいそうになぁ・・・・
　　きっと雪深い田舎から船に乗って出てきたんやろ
　　おかあさんが名前を呼びながら追いかけてきてなぁ・・・」

　みねあ、それじゃおしんだ

　「いらっしゃいませ☆・・・ねえねえ、今度はどんな依頼なの？」
　「動物を飼いたいいう話や」
　「だったらまりあの魔法で・・・」

☆どっか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん☆

　「・・・・・・見事にお約束やな」
　「ぶう☆今度は成功だもん」
　「いつもとなにも変わってへんやないか」
　「ちがうもん☆今回はちゃんと成功だもん」
　「なにがどう成功・・・・・・・って、半分しか成功してへんで」
　「あれっ☆」
　「あの・・・なにがあったんですか？」
　「・・・・そこの鏡をみてくれへんか？」
　「鏡・・・ですか？」

　ＭＭＭＣ魔法商会備え付け、全身像が映る鏡の中にフローネが見たのは
　ねこてねこみみねこしっぽな自分自身の姿だった

　「・・・すまんなぁ、動物を飼いたいと動物に成りたいが
　　ごっちゃになってたみたいや
　　今元に戻すさかい待ってや」
　「いえ、その・・・・」

　ハッピンパラリコズンパラリン

　「やっぱりぃめりっちゃのフォローがないとなにも進まないって言うかぁ」
　「せっかくうちが魔法使えると思うたのに、結局おいしいところ持って行くんやな」
　「これがぁ店長の特権って感じでぇ」
　「・・・・・・あの、別に元に戻らなくてもよかったんですけど・・・・」
　「へ？」
　「きゃは☆人の話は最後まできかないと」
　「まりあにだけは言われた無いわ」
　「ぶう☆なによぉ」
　「喧嘩してるとぉ話が前に進まないって言うかぁ」

　めりっちゃにつっこまれるようではおしまいである

　「・・・・・・・・・・・・」
　「・・・・・・・・・・・・で、
　　住み込みでも動物を飼えるようにすればええんやったな？」
　「はい、そうなんですが・・何かいい方法がないでしょうか？」
　「そうやなぁ・・・どうして飼うたらいけんいうてるんか
　　わからんと、対策も立てにくいわ」
　「・・・・それがよく分からないんです
　　規則で飼ってはいけないらしいんですけど・・・
　　・・ルシードさんはティセさん飼ってますし・・・」
　「ティセさん・・ちゅうて、人間とちゃうんか？」
　「いえ、人間じゃないんですよ」

　そりゃ確かに人間じゃないが・・・普通は動物に分類したりもしないぞ

　「そうか・・・せやたら、やっぱり人に迷惑掛ける
　　生き物がようないんかもしれんなぁ」
　「・・・・ティセさん、いつもお皿割ったり
　　茶碗をひっくり返したりしてますけど・・・」
　「結構迷惑掛けてるやないか
　　せやたら、なしてお客さんは飼うたらいけんのやろ・・」
　「ええ・・・それが分からないから困っているんです」
　「やっぱり☆ペットモンスターでないと飼ったらだめなんじゃ」
　「普通はペットモンスターやから飼うたらいけんのやろ」
　「でも☆ペットモンスターは今大流行なんだよ
　　ヒューガハート以外の世界だって大流行なんだから」

　そういって、まりあが見せたのは、今アメリカでも大流行の
　雷を放つ黄色い小さな生き物のカードだった
　しかし・・・まりあ、何時どうやってそれを手に入れた？

　「あのね☆この前のお客さんの瞳って言う人がくれたんだよ」
　「・・・・・でも、私の友達はみんながみんなペットモンスター
　　ではありませんから・・・あまり解決にならないですね・・」
　「そうやなぁ・・・せやたら、これはどうやろ？」

　そういうと、みねあは店の奥からドールハウスに似た
　妙な機械を持ち出してきた

　「なんなんですか？これは？」
　「ふっふっふ、これぞＳ＆ＷとＭＭＭＣ魔法商会がタイアップして開発した
　　『住めるドールハウス』や
　　この玄関の部分は表側が物質縮小魔法の発動キー
　　内側の扉は物質拡大魔法の発動キーになってるんよ
　　せやから、玄関をくぐって中に入ろうとすると・・・・」

　そういうと、みねあは玄関をくぐってドールハウスの中に入ってみせる

　「・・・・まあ、こういう具合に家の中に入れる訳や
　　逆に外に出たいときは、内側の扉をくぐるだけで
　　ちゃんと元の大きさに戻るんよ」
　「わあ、すごいですね」
　「そうやろそうやろ」
　「でも・・・高いんでしょうね・・・」
　「大丈夫や、今これは試作段階やから
　　商品モニターっちゅうことで貸し出すさかい
　　一月つこうてみて、結果を教えてくれるんなら
　　ひとまずつこうて欲しいんやけど」
　「いいんですか？ありがとうございます」
　「礼を言うのはこっちや、いままでモニターの引き受け手が無くて
　　困ってたんよ」
　「はい、では一月後に報告に来ますね」

　（からんからん）

　こうして、フローネは妙な家を手に入れた
　しかし、フローネ・・・モニターの引き受け手が無いって言うのは
　非常に危険だって意味なんだけど・・・

　何はともあれ、部屋の中へドールハウスを設置するフローネ
　さて、その後フローネはといえば・・・・・

　「ほら、わんちゃん、おはいりなさいな」
　「俺は犬じゃねえ！」

　・・・・・・・・おいおい

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい