お客様番号０１７：ニール・フォートニー

　「みんなみんな、ビッグニュースなのだ」
　今日もまた、自称敏腕記者ニール・フォートニーが駆け込んでくる
　「・・・・・・・・」
　だが、いつものたまり場には誰もいなかった
　「みんな、ひどいのだ、おいらを置き去りにしてどこかへいってしまったのだ」
　そういう情報を手に入れられないようじゃ、敏腕とは言わないと思うが？
　「そ、それは・・・ここのところ忙しくてみんなと会う暇がなかったのだ」
　そう、確かにニールは忙しかった、学校を卒業してから
　ライラ先輩よろしくフリーのルポライターになったのだから・・・

　ただ、彼の集める情報はガセだらけなのも事実なのである
　「そ、そんなことはないはずなのだ
　　ちゃんとした情報も集めているのだ」
　それにしても、正確さがイチローの打率より低いのは問題だぞ
　「それはイチローの打率が高いのだ」
　そういっていると、今に新庄の打率も下回っちゃうぞ
　「そ、それは・・・・困るのだ」
　思い切り落ち込むニールであった
　何となく新庄に失礼なような気がするが、
　まりあの魔法の成功率と比べられるよりましであろう

　「あの・・・これ、どうぞ」
　ふと、ニールの目の前に、ピンクの髪と、その中から飛び出した
　うさみみが印象的な少女が目の前にいた

　「これはなんなのだ？」
　ニールは、うさみみ少女の差し出したチラシに目を通した

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                           ちょっとした悩みがあるとき
                         ほんの少しの手助けが必要なとき
                   そんなとき、私たちのことを思い出して下さい

    Ｍｙｓｔｉｃａｌ　Ｍｉｒａｃｌｏｕｓ　Ｍａｇｉｃｉａｎｓ　Ｃｏｍｐａｎｙ

             ・・・・・・・いつでも、あなたのそばに・・・・・・・・

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　「・・・・・・・なにか、怪しげな香りがするのだ」
　「だからいいんだよ（はあと）」

　一里も二里も九十九里
　九里四里うまい十三里

　ネタの香りに惹かれてニールはふらふらとＭＭＭＣ魔法商会の門をくぐるのであった
　それにしても、うさみみ少女の口車に乗せられるニールっていったい・・・

　（からんからん）

　「ごめんくださいなのだ」
　「いらっしゃい、こっちは魔法の何でも屋
　　ＭＭＭＣ魔法商会本店や」
　いつものように営業用スマイルのみねあが応対に出る
　「魔法の何でも屋は珍しくないのだ」
　「そうなんか？せやけどうちらはどこぞの魔法ギルドとちごうて
　　良心的価格を設定してるんよ」
　「普通魔法ギルドは良心的価格なのだ」
　「そんなことあらへん、なんでもえんふぃーるどとかいう街の
　　魔法ギルドは、人の命が懸かった依頼に法外な値段をふっかけたそうや」
　「それはほんとうなのか？本当ならニュースなのだ」

　正真正銘本当だから困るのである（悠久２『ゴースト・シンガー』参照）

　「こんにちわっ☆（くるくる）あ、いらっしゃいませっ（すたっ）」
　本人のつもりでは、軽やかなステップでまりあが登場する
　「なんやまりあ、今日は早かったんやな」
　「うん☆まりあ今日は居残りがなかったんだよ」

　いつもは居残りばっかりなんかい

　「ねえねえ☆どんな悩みがあるの？
　　どんな悩みでもまりあの魔法で解決してあげる☆」
　「おいら、特ダネを探しているのだ」
　「そうなの？だったらまりあの魔法で・・・・・」

☆どっか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん☆

　単語登録してあるから今までのようにいちいち手で入力する必要がないのだな

　「けほっ、まりあ、なにをさがすつもりやったんや？」
　「えっとね☆殺人事件」

　まりあ、頼むから笑顔で恐ろしいこと言わないでくれ

　”ハッピンパラリコズンパラリン”

　「もうちょっとでぇ店の中で殺人事件が起きるところだったって言うかぁ」
　「なんや店長、毎度のことやけどなんかある前にとめればええやんか」
　「やっぱりぃ、主役はかっこよく登場しないとぉ」
　「うちがこの話の主役なんや」
　「おいらじゃなかったのか？」
　「あ、お客さんわすれてたわ
　　ところで、どんな依頼やったかいな？」
　「おいらはネタ探しにここに来たのだ
　　なにかおもしろい情報があったら教えてほしいのだ」
　「そういわれても別段珍しいことはあらへんさかいなぁ
　　この間エンフィールドで祭があったこととか
　　アメリカで巨大竜巻が発生して大きな犠牲が出たこととぐらいかいな」
　「アメリカって、どこなのだ？」
　「うちにきかんといて」

（からんからん）

　「いらっしゃいませ・・・・・って、みんなそろっとるっちゅうことは
　　準備ができたんやな」
　「その通りだ」
　「大丈夫でしょうか？」
　「試してみないと分かりませんよ、ねえピー太郎君」
　「ぴぴっ」
　「うまくいかなかったらあたしが承知しないんだから」
　「・・・・ほえ、失敗することもあるんですか？」
　「何でもいいからさっさとやろうぜ！」
　「なによ、何事も準備が大事なのよ」
　「・・・・・・・・ナッツ君、よくこんな連中とつきあえるわね」
　「でも、気のいい仲間だろ」
　「あれ？なんでみんなここにいるのだ？」
　「ニール、いったいどこに行ってたんや
　　みんなナッツを元に戻すために苦労してたっちゅうのに」
　「？？？」
　「まあ、やりながらゆっくり説明すればええやろ
　　頼んどいたアイテムは全部出来てるかいな？」
　「ああ、依代が２つに、サンプルデータが２つ
　　ちゃんと用意してきた」
　「せやたら、すぐに人格交換から始めるわ
　　店長とまりあは変身魔法の方の準備にかかってや」
　「しかし、原理が分かれば俺がやった方が確実だが」
　「うちらの失敗やさかい、うちらの手でけりをつけさせてぇな
　　・・・・と、触媒はこれをつかえばええな」

　そういうと、みねあは手早く人格交換の準備に取りかかる

　「・・・・？？？みんな、いったいなにを始めるのか教えるのだ」
　「だったら、俺が説明してやる
　　ラディとナッツがそれぞれ性転換させられた話は知っているか？」
　「それは聞いたことがあるのだ」（ＭＭＭＣ魔法商会vol.15,#2799参照）
　「それを、今度は元に戻そうというのだ」
　「けど、どっちの魔法も解除不可能だと聞いたのだ
　　それでみんな苦労したのだ」
　「そうだ、もし性転換したのが片一方だけなら元に戻すことは不可能だ
　　だが・・・」
　「まず、人格交換は成功や（にぱっ）」
　「みねあさん、人格交換だけだと性別は元に戻っても
　　外見は入れ替わってるわよ、どうするのこれから？」
　「ここで☆変身魔法の登場っ」
　「これこそぉ、めりっちゃの得意技って言う感じ〜」
　「・・・ほえ、得意技なんですかぁ」
　「おお、燃えてきたぜ！」
　「リュークが燃えてもしょうがないじゃない」
　「全然話が見えないのだ」
　「なんだ、まだ分からないのか？
　　なら最後まで説明してやる
　　性別自体は変更不可能だが、ほかの魔法の効果まではじく訳じゃない
　　それなら、お互いの人格を入れ替えれば性別は元に戻る
　　ここまではいいな」
　「そこまでは分かったのだ」
　「ならば、後は外見を元に戻せば性別も外見も元通りになるわけだ」
　「どうやって外見を元に戻すのだ？
　　変身魔法を掛けるにはマジックイメージの定位が必要なはずなのだ
　　女性化したナッツと、男性化したラディのイメージで掛けたら
　　元の木阿弥なのだ」
　「そう、変身魔法が完全に掛かるものならばな」
　「？？？」
　「まあ、うちが説明したる
　　結局誰にも解けへん性転換魔法やから、うちらの変身魔法でも
　　性別を入れ替えるわけにいかへんのよ
　　せやから、マジックイメージ自体は性別が逆やったとしても・・・」
　「やったあ☆大成功」
　「やっぱりぃ責任者が優秀だと何事もうまくいくっていうかぁ」
　「うちが仕入れてきた触媒が優秀なんや」
　「ぴっぴっぴ！」
　「・・・おお、そうやな、鳶がとってきた分を忘れたらあかんな」
　「ははは・・、僕は別にかまいませんよ
　　ナッツ君が元に戻れればそれでいいじゃありませんか」
　「・・・ラディさんを忘れてます・・・」
　「ま、済んだことは済んだことや
　　これで依頼は１００％解決したわけやな」
　「・・・・う〜、なにか納得行かないのだ
　　本来はおいらが主役のお話のはずなのだ」

　ニール、おまえ特ダネがあるんじゃなかったのか？

　「そうだったのだ！思い出させてくれてありがとうなのだ」
　「特ダネ？」

　一同、怪訝そうな顔でニールをみる
　日頃の行いが行いだから信用がないのは仕方がないだろう

　「そうなのだ、スクープなのだ
　　とうとうナッツとラディが結婚するのだ」
　「・・・・ニール君、それ、私も初耳なんだけど」
　「へ？今度は自信があったのだ、絶対にほんとなのだ」
　「・・・ガセネタつかまされたな」
　「だいたいそんな大事なことあたし達が知らないわけないじゃない」
　「そ、それはそうなのだ・・・」
　「・・・・どうしたんやナッツ、顔色がおかしいで」
　「い、いやそれはその・・・・」
　「・・・・・・・・ナッツ君？」
　「な、なに？」
　「さっきポケットに手を入れたら、こんなものがあったんだけど」

　そういって、ラディが取り出したのは真っ白な小箱

　「えっと、それは・・・」
　「ナッツさん、ここは男らしく決めるべき時だと思います」
　「ぴっぴぴ」
　「ほらほら、ピー太郎君もそういってますよ」
　「えっと、それはその・・・・」
　「なになに☆なにか困ってるの？だったらまりあの魔法で・・・・」

☆どっか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん☆

　「わあ！せっかく買った婚約指輪がぁ！！！」
　「あわてるな、単なる煙だ」
　「・・・・・ナッツ君、どういうことなの」
　「え、えっと、、、その・・・・・・き、切り出すタイミングがなかなかなくて・
　　その・・・う、受け取ってくれるかな？」
　「ナッツ君、『私の』ポケットにあるものは私のものよ」

　今回の話はここで終わりにしておこう
　ナッツとラディにとっては、ここからが始まりだったとしても
　正しい情報をつかむことが出来たニールにとって
　このお話は、ここでハッピーエンドなのだから


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい