お客様番号０１１：アルベルト・コーレイン
　お客様番号０１２：　　クレア・コーレイン


　「ちっ、なんであいつは毎回毎回・・・」
　今は晩秋、木枯らしの吹く季節
　「俺の働いた金で買ったんだぞ・・・」
　エンフィールドの街を、自称自警団のホープはいらだたしげに歩いていく
　「まったく、あいつはお節介というか・・・」
　ああ、またクレアに化粧についていわれたのか
　「やかましい！！！」

　「ご、ごめんなさいっ」
　ふと、アルベルトが気がつくと、ピンクの髪とその中から飛び出した
　うさみみが印象的な少女が目の前にいた
　「め、迷惑だったら受け取ってもらわなくても良いんだから・・その・・」
　おびえたような瞳で、アルベルトを見つめるうさみみ少女

　はっきり言って、回りの視線はアルベルトに冷たい
　「・・・・誰のせいだと思ってるんだ？」
　（びくっ）
　うさみみ少女は、アルベルトの言葉に更におびえたようだ
　回りの視線が、徐々に敵意を含んでくる
　まあ、端から見ればいたいけなビラ配りに因縁つけているようにしか
　見えないのだから、やむを得ないであろう

　「い、いやその・・・ところで、おまえ何をしているんだ？」
　「ボ、ボクは・・・あの・・・これを配るお仕事してるの」
　うさみみ少女が、ふるえながら差し出したチラシには、
　次のように書かれてあった

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                           ちょっとした悩みがあるとき
                         ほんの少しの手助けが必要なとき
                   そんなとき、私たちのことを思い出して下さい

    Ｍｙｓｔｉｃａｌ　Ｍｉｒａｃｌｏｕｓ　Ｍａｇｉｃｉａｎｓ　Ｃｏｍｐａｎｙ

             ・・・・・・・いつでも、あなたのそばに・・・・・・・・

  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　「また、怪しげなものを配ってるんだな」
　うさみみ少女の瞳が潤む
　回りの通行人の瞳が、はっきりとアルベルトを非難する
　まあ、日頃の行いというものであろう
　「・・・作者の陰謀だろうが」
　そうともいう
　でも、アレフだったらそんな非難がましい見方をされないと思うが？
　「あーわかった分かった、・・あの・・・面白そうな店だな」
　「・・・・・・・（うるうるうる）・・・・・」
　「・・・その・・・なんだ、一度行ってみたいな」
　「・・・ほんとに？」

　ちょっとだけ、嬉しそうな顔を見せるうさみみ少女
　アルベルトは、轟沈した

　（からんからん）

　「兄さま、ちょうどよいところにいらっしゃいました」
　「な、なんでクレアがここにいるんだ！？」
　「ピンクの髪をした親切な方に紹介していただいたんです」
　「もしかして、うさみみが印象的な女の子か？」
　「そうですわ、兄さま」
　「中のええ兄妹やなあ、
　　いらっしゃいませ、相談事はどのようなことでございますか？」

　職業用スマイルのみねあが、アルベルトの応対に入る

　「相談事？」
　「兄さま、ここは魔法の何でも屋を行っておられるんですわ」
　「魔法の何でも屋だと？」

　背筋に、冷たいものが走るアルベルトであった
　このエンフィールドで、魔法がかむなら必ず登場する人物に思いを馳せたからである

　「あ☆アルじゃない
　　なになに？何か相談事？」
　「なんやまりあ、知り合いかいな？」
　「えっとね☆この人って自警団の問題児なんだよ」
　「誰が問題児だ！」

　まあ、エンフィールド随一の問題魔法少女にだけはいわれたくあるまい
　ただ、悠久１本編だと、誤認逮捕しかしていなかったのは事実である

　「本当なのですか？兄さま」
　「そ、そんなことはないはずだが・・・・」
　ほ〜お、だったら、主任さんの一件とか、リサの一件（ＰＳ版のみ）とか
　ピートの一件とかも、誤認じゃなかったといいたいわけだな
　「うっ・・・」
　「お！・に！・い！・さ！・ま！」
　「だあ、あれは若さ故の過ちだ！
　　現に２ｎｄだったら、誤認逮捕はやってない！
　　ったく、わざわざ一音節毎に感嘆符をつけてしゃべらなくていい！」

　「まあまあ、人間失敗を重ねて成長するものやさかい
　　昔の過ちを上げへつらうものやあらへん
　　それより大事なのは未来や
　　で・・・どんな相談事やったかいなあ？クレアさん」
　「はい、みねあ様
　　兄さまの化粧をなんとかしてやめさせていただきたいのです」
　「なんだそうなの？だったら☆まりあの魔法で・・・」

　どっか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん☆

　「あれっ☆」
　「やっぱりぃ、予想通りの結末っていうかぁ」
　「なんや、店長は毎回毎回爆発してからの登場やな」
　「だってぇ、真打ちは前座の後から登場するんだしぃ」
　「ぶう☆誰が前座なのよぉ」
　「なら、めりっちゃが真打ちの力を見せて上げるって感じかな」

　”ハッピンパラリコズンパラリン”

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　「やっぱり、めりっちゃって天才！」
　「確かに、手が込んでるなぁ」
　「なによぉ☆まりあだってこんどはもっと凄いのをやってあげるんだからぁ」
　「・・・・・・あの、兄さまはどこへ行ったのでしょうか？」

　おにいさま・・・って、ああ、
　お約束なら爆裂魔法の餌食になって黒こげのはずだけど

　「だれが黒こげだ！」
　「兄さまっ、ご無事だったのですね」
　「だあ、クレアひっつくな」
　「やっぱりぃ、仲のいい兄妹だからぁ、当事者同士で解決するのがぁ
　　一番みたいなぁ」
　「それやったら無責任やろ
　　時に、なしてアルベルトはんは化粧なんてしてるんや？」
　「男の美学だからだ」
　「ちっとも美しくありません
　　男の方は、化粧などという女々しい事に逃げては行けないんです」
　「せやたら、どういうのが男らしいと思うんや？」
　「やはり、殿方は中身で勝負するのが一番だと思うんです
　　外見にばかり気を使うのではなく、自分自身を高めることで
　　自然とにじみ出る風格を身につけるのが、男らしさです」

　・・・・・・う〜む、一理あるな、そう言うことだアルベルト
　化粧をやめて修行に精を出せ

　「なんでおまえにまでいわれなければならないんだ？」
　「兄さま、作者の方もそう言っておられることですし
　　きっぱりと化粧をやめて下さい
　　リカルド様は化粧などされておりませんが
　　立派な殿方ではありませんか」
　「だから、俺は俺の生き方っていうのがあるんだよ
　　なんでそこまでおまえに干渉されなければならない」
　「私は兄さまのことを思って申し上げているんです
　　アリサ様は人の外見ではなく内面をごらんになっておられます
　　おにいさまも、化粧などにうつつを抜かす時間がありましたら
　　その時間を内面を磨くためにお使い下さい」
　「大きなお世話だ！！！！！！」

　わかる、わかるぞアルベルト・・・・・
　確かにクレアの方が正しいと思うが、おまえの気持ちは分かる
　よれよれの服を着ていようが、靴の踵がつぶれていようが
　肩の線がずれていようが、ちょっとぐらいよそ行きの服が汚れていようが
　服の組み合わせが無茶苦茶だろうが、別に構わないじゃないか

　「それはひどく問題なんとちゃうか？」
　「兄さま、あのような作者と同じレベルにまでなってよろしいのですか？」
　「・・・・・・・・・・・俺もああはなりたくねえ・・・・・・・」

　・・・・きさまらぁ！作中人物のくせに作者になんちゅう言いぐさだ

　「やっぱりぃ、日頃の行いが悪すぎるっていうかぁ」
　「まりあも☆そうおもうけど」

　・・・しくしくしくしく・・・・

　「・・だ、だからだ、男も化粧ををして外見にも気を配らなけれなければ
　　ならないと思うだろ？」
　「それとこれとは別問題です！」
　「同じだ！」
　「違います！」
　「・・なんや、どこまで行っても平行線やなあ・・・」
　「やっぱりぃ、相互理解への努力が欠けてるからぁ」

　まあ、めりっちゃにいわれるようではおしまいである

　「ねえねえ☆めりっちゃの兄弟はどんななの？」
　「めりっちゃの場合はぁ、みんなめりっちゃの魔法の練習台に
　　なってくれるかな、やっぱりぃめりっちゃって天才少女だからぁ」

　・・・泣きの涙で付き合っている、って可能性は全く無視してるなあ・・

　「ねえみねあ☆このままほおっておくの？」
　「そういうわけにもいかへんやろ・・・
　　よっしゃ、みねあちゃんのとっておきをつこうたろ」

　みねあは、怪しげなマジックアイテムが並ぶ棚から
　二つの人形を取り出す・・・アルベルト人形と、クレア人形とを
　まあ、どんなものか興味のあるかたは、トレカの箱か攻略本の裏表紙を
　ごらん頂ければ、そのまんまである

　「ふっふっふ、お客様番号００８のティナはんに
　　特注で作ってもらった人形やで
　　あとは、これを触媒にして魔法を掛ければ・・・・」

　みねあは、二つの人形を魔法陣に入れると
　さっそく怪しげな魔法辞典を取り出して呪文を唱え始める


　　魂と肉体をつなぎ止める結び目よ、神の吹き込みし息よ
　　我が導きにしたがいて新たなる依代に移れ
　　我は汝に新たなる結び目をあたえん、
　　我が導きは神の手なり我の結わえるは宿命なり
　　今ここに、仮の依代を伝いて新たなる宿を得よ
　　現世はすべて仮の宿なり、肉体は一夜の宿なり
　　されば我が導きにしたがいて新たなる宿を目指すべし
　　我は命ず！扉を開けて新たなる世界へ！


　「ですから、兄さま・・・・あら？」
　「だあ、いいかげんに・・・なにっ！」
　「ふっふっふ、やっぱりみねあちゃんが一番頼りになるやろ」
　「え☆なになに？何をしたの？」
　「見ての通り、人格交換や
　　二人ともお互いをよく知るには、相手の立場になって考えるのが一番やろ
　　これで一日過ごせば、お互いの考えが養和かるんと違うか？」

　・・・なんか、「鳥を裂くに何ぞ牛刀を用いん」って言葉が当たっているような・・
　「中途半端にやるぐらいなら、余るぐらいがええねん」
　・・・及ばざるはすぎたるにまされりって言葉もあるんだけど・・・
　「みねあちゃんの辞書にはあらへん」
　・・・・・・私が悪かった

　「それより、すぐに元に戻せ！」
　う〜ん、クレアの格好でいわれると確かに違和感あるなぁ
　「兄さま、せっかくみねあ様が好意でして下さったのです
　　もう少し丁寧な言い方をして下さい」
　う〜ん、アルベルトがこういう言い方をするっていうのにも、違和感があるぞ
　「兄さま、もうすこし他の方へ思いやりのある言い方は出来ないのですか？
　　違和感があるなどといわれているではありませんか」
　「だあ、そんなことはどうでも良い、今戻せ、すぐ戻せ」
　「いえ、戻さなくても結構ですわ」
　「な、クレア何を言い出す！」
　「確かに、みねあ様の言葉にも一理あります
　　私が兄さまが日頃為されている事を体験すれば
　　少しは兄さまのことがわかるのではありませんか？
　　兄さまはいつもお節介だとか、よけいなお世話だとおっしゃいますから
　　私がいなくても大丈夫なのかどうか、私自身で体験してみます」
　「あ、あのなクレア・・・・」
　「決まりやな、代金は元に戻したときにまとめて精算させてもらうわ」
　「はい、よろしくお願いします」
　「ちょっとまて、残り行数はほとんどないのに、まだ話を続けるつもりか？」

　ふっふっふ、アルベルトとクレアの人格交換ものは
　始めからネタとして考えていたのだよ
　だから、今回は後編があるのだな

　「そんなのありかぁ！」
　「さあ、兄さま、さっそく帰りますよ」
　「やりなおしだ、やり直しを要求する！」
　「そんな班長さんみたいな事を言ってもだめです！」

　ずるずるずる・・・・（からんからん）

　こうして、アルベルトの体に宿ったクレアは
　クレアの体に宿ったアルベルトを引きずってＭＭＭＣ魔法商会を出る
　さて、二人の運命やいかに？

　それは、後編のお楽しみ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　後編につづく