お客様番号００５：おおかみいぬ

　「こんにちわっス」
　え？
　「ちょっと話を聞いて欲しいっス」
　・・・・・・へ？うわぁ！！！！
　「ちょっと、逃げ出すなんてひどいっスよ」
　声をかけられた男は、すでに姿が見えなくなっていた
　「・・・・これで１０人めっス・・・・」

　そういって、発泡スチロールのりんご箱に乗っている
　体長３０ｃｍぐらいのいぬは落ち込んでいた

　「ぼくは犬じゃないっス！」

　でも、外見は犬にしか見えないぞ

　「それでも犬じゃないっス！」
　「そうだよね、人を外見だけで判断するものじゃないよね」

　ふと彼が気づくと、そばにピンクの髪とその中から飛び出したうさみみが
　印象的な少女が目の前にいた

　「そうっス、人を外見で判断するものじゃないっス」
　「うん、ボクもうさぎに間違われて困るんだ」

　別に、間違われているわけでは無いと思うのだが・・・

　「ところで、さっきから何をしてるの？」
　「部活の勧誘っス、期限までにメンバーを集めないと廃部になるっス」
　「なんだか、どこかで聞いたような話だね」

　ほっとけ

　「そうなんっスよ、誰か何とかして欲しいっス」
　「そういえば、昔そういう事態を乗り切った人がいるらしいんだ
　　その人に相談してみたらどうかなぁ？」
　「ほんとうっスか？その人はどこにいるっスか？」
　「ここに地図があるよ」

　そう言って、少女は一枚のチラシを彼に手渡した


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                           ちょっとした悩みがあるとき
                         ほんの少しの手助けが必要なとき
                   そんなとき、私たちのことを思い出して下さい

    Ｍｙｓｔｉｃａｌ　Ｍｉｒａｃｌｏｕｓ　Ｍａｇｉｃｉａｎｓ　Ｃｏｍｐａｎｙ

             ・・・・・・・いつでも、あなたのそばに・・・・・・・・

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　「きっと力になってくれるよ」（はあと）
　「サンキューっス。恩にきるっス」

　彼は、さっそく青森と書かれたりんご箱に乗って飛んでいった
　・・・・・・・やっぱり、異様な光景だよなぁ

　ところは変わってＭＭＭＣ魔法商会

　「店長、そういえば誕生日迎えはったんやなぁ
　　せやたら、店長もこれで２２才なんやな」
　「え〜、めりっちゃ永遠の１６才って感じなのに〜」
　「万年１６才でどないするんや」
　「魔法少女はぁ年をとらないのがぁお約束ってぇいうかぁ☆」

　（からんからん）

　「こんにちわっス、相談事があって来たっス」
　「いらっしゃいませ、ご用件をどうぞ」

　来客用スマイルでみねあが応対する

　「実は部員募集の事で相談が有るっス」
　「他当たってや」
　「そんな、それはひどいっスよ」
　「せやかて、そんな部員募集の妙手があるんやったらうちが聞きたいわ」
　「だったらまりあの魔法で・・・」

　だから、説明聞かずに魔法を使うのはやめろよ、まりあ・・・・

　どっか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん☆

　久しぶりの大爆発であった

　「あれっ☆？」
　「またまた大失敗って言うか〜」
　「ぶう☆だったらめりっちゃがやってよ」
　「もっちろ〜ん、っていうかぁ
　　誕生日を迎えてパワーアップした超天才魔法少女
　　めりっちゃの実力を見せてあげるって感じかなぁ☆」

　おお、言葉の端々に☆をちらしてのりまくっているめりっちゃ
　ま、松田聖子も再婚したし

　「それは関係ないと思うっス」
　やかましいわい、それよりめりっちゃの魔法が問題だろうが

　”ハッピンバラリコズンパラリン！！”

　☆☆ピロリロリ〜ン☆☆

　いつもよりたくさん☆を飛ばしております

　「やったあ、大成功みたいなぁ☆」
　「・・・・・・・・・・・・・」
　「・・・・・・・・・・・・・」
　「・・・・・・・・・・・・・」
　「もう〜、めりっちゃの天才ぶりに言葉も無いって感じかなぁ☆」

　確かに・・・確かにたくさんの部員は集まったのかもしれない
　だが、しかし、・・・なんだ、その・・・・・
　メンバーにひどく問題がないか？

　リリカに紅月にピートの初恋の相手にジャネットのおとうさんに
　歌うすみれに音痴な歌姫に花屋で聞こえる謎の声の正体に
　夕暮れ時の戦士にカレンのおかあさんにメディア姫に・・・・

　「・・・・・店長、幽霊ばっかりあつめてどないするんや？」
　「え〜、員数合わせは幽霊って相場が決まってるっていうかぁ☆」

　そう、集まっているのは幽霊ばかりなのであった

　「最初から幽霊っていうのは酷いっスよ」

　そういって、長野と書かれたりんご箱のうえで、彼は
　うるうるひとみを見せた

　「ちょっと、だったらなんであたしがいるのよ」
　「きゃは☆ローラじゃない」
　「なんや、幽霊やないんか」
　「ひっど〜い、あたしはれっきとした生霊なんだから」
　「ほんとにそうだったの？☆」
　「やだ、本気にしないでよ」

　・・・・・・き、気を取り直して・・・

　「どうでも良いから相談に乗って欲しいっス
　　このままじゃ廃部になってしまうっスよ・・・」
　「部活、それは先輩と後輩の閉ざされた世界
　　そしていつか二人の間に愛が芽生えるんだわ」
　「現実はそんなに甘く無いっていうかぁ☆
　　めりっちゃもマスターやっていたときがあるけど〜
　　そんなことは全然起きなかったって言うかぁ☆」
　「そうなんか？ルーファス先輩やシオン先輩は上手いこと
　　やってるような気がするねんけどな」
　「他の人は全然っていうかぁ☆」

　言われてみればその通りである
　アカデミーマスターの中でもあの二人は特別なのだろうか

　「ところで最初に聞くべきやったと思うんやけどな
　　一体何の部活をしてるんや？
　　それがわからへんと募集のやりようもないんやけど」
　「それを言い忘れてたっス
　　偉大な先輩のいる由緒正しき王道を歩む部活動
　　ウィザーズ・アカデミーっス」

　どど〜ん
　おおかみいぬ、一世一代の大芝居であった

　「・・・・せやたら、うちらがおるさかい
　　部員の数は足りてるんちゃうか？」
　「世代交代っス、新作が出るから集め直しっス」
　「きゃは☆これでみねあもまりあの年を追い越しちゃった」
　「せやたら、うちもいきなりＳ＆Ｗ卒業してまうってことか？」

　どど〜ん
　思いっきり落ち込むみねあであった

　「これで〜、みねあもめりっちゃのことぉ〜
　　おばさん扱い出来なくなったっていうかぁ☆」
　「甘いで店長、年齢差はかわらへんのやで」

　なんだか、急激に空気が重くなってきてしまった・・・
　どうしよう？

　「明日にするっス」
　「それならまりあの魔法で・・・」

　だから、説明を聞け〜！！！！

　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

　「やったあ☆大成功！」

　え？本当だ！
　ちゃんと明日になってる、凄いじゃないかまりあ！

　「えへへ☆」
　「ちょっと待つっス！！、明日になったら困るっス！！！！
　　昨日が部員集めの期限なんっスよぉ！！！！！！！！！」

　・・・・うるうるしくしくさめざめえんえんおいおい・・・・・

　いくら泣いても、時は元には戻らないのであった

　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい