お客様番号００４：こーじ

　「・・・・・・」
　今は春、心も体も重いコートを脱ぎ捨てるとき
　「・・・・・・・・」
　今は春、別れと出会いの季節
　「・・・・・・・・・・」
　今は春、なにか新しい世界を予感させる時
　「・・・・・・・・・・・・・」
　そう、そしてここにも一つの出会いとともに
　新しい自分と向き合う人物がいた

　「ああ、せめてもう一度彼女に会いたい」

　街路樹の影にたつ男が一人
　ただ、道行く人を眺めている・・・・・

　「こんにちは、どうしたの？」

　ふと気がつくと、男の前に一人のビラ配りが立っていた

　「いえ、人を捜してるんです」
　「どんなひと？ボクに出来ることがあったらいってみてよ」
　「そう・・・太陽のように明るくて・・・・
　　ああ、彼女の回りではすべてが輝いて見えた・・・・」
　「ふーん、じゃあさあ、ちょっとこれを見てみてよ」
　「なんのちらし？」

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                           ちょっとした悩みがあるとき
                         ほんの少しの手助けが必要なとき
                   そんなとき、私たちのことを思い出して下さい

    Ｍｙｓｔｉｃａｌ　Ｍｉｒａｃｌｏｕｓ　Ｍａｇｉｃｉａｎｓ　Ｃｏｍｐａｎｙ

             ・・・・・・・いつでも、あなたのそばに・・・・・・・・

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　「ここは人捜しもしてくれるんでしょうか？」
　「もちろんだよ」

　そういって、ピンクの髪とその中から飛び出したうさみみが印象的な少女は
　男を純真な目で見上げた

　・・・・・・しらないって、本当に幸せなことだよなぁ・・・・

　男は、その瞳に吸い込まれるようにその店へと歩んでいたのであった

　（からんからん）

　「ごめん下さい」
　「いらっしゃいませ」
　「ねえねえ☆なんのようなの？」
　「せやから、お客さんにそんな口のききかたはあらへんやろ
　　いらっしゃいませ、ご用件をどうぞ」
　「いえ、人捜しをして欲しいんですけど・・・」
　「だったらまりあの魔法で・・・・」

　・・・・だから、まりあ、人の説明は最後まで聞けよ
　誰を捜すのかも聞いてないだろうが

　どっか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん☆

　「またぁ〜、お約束だった〜みたいな〜」
　「けほっ、まりあ、なんかうちに恨みでもあるんか？」
　「あれっ☆？」

　くるくるくるくる・・・・・
　人差し指がくるくるくる・・

　「あの？いったい何がしたかったんでしょう？」
　「えっとぉ・・・探している人を召還する魔法・・・だったはず・・・なんだけど」
　「そんなん誰よぶんかきかへんかったら使えるわけなかろ
　　どんな人を捜してるんや？」
　「えっと、・・・ああ、彼女は僕の太陽
　　一目見たとき、運命を感じたんです・・・・」
　「なんだか〜、目の焦点があってないみたいな〜
　　たぶん〜、一目惚れって感じ〜」
　「そんな本当のことを言わないで下さいよ」

　照れるな照れるな

　「せやけど、これじゃ探しようがあらへんやん
　　まあええ、ちょっと占いしたろ」
　「占いですか？」
　「せや、新作の占いでこれからどうすればええんかうらのうたるわ」

　そう言うと、みねあは怪しげな本が並ぶ本棚から
　一箱のカルタを取り出すと、テーブルの上に妙な魔法陣を３つ書いてから
　カルタを全部裏向きにして混ぜた

　「せやたら、探して欲しい人をイメージしてカードを順番に魔法陣においてや」

　男は、言われたとおりにカードを順番に魔法陣に置いていった
　みねあは、３枚のカードを順番に表にしていく

　「これが、いの逆位置なんか
　　それで、こっちがしの逆位置
　　最後が、あの正位置・・・・」
　「・・・・・・どうなんでしょうか？」

　にこっ

　「大丈夫や、きっと探し人はみつかるさかい大船に乗った気でおってや」
　「どんな占い結果なんでしょう？、説明してもらえないでしょうか？」
　「そんなん、見たまんまやんか」

　普通は、分かるわけがないと思うんだな

　「まあまあ、気にせんでも大丈夫や」
　「そう言われると、ますます気になりますよ」
　「やっぱり〜、めりっちゃの出番になった〜、みたいな〜」
　「店長？なんかええ知恵でもあるんか？」
　「もちろ〜ん、あるに〜決まってるっていうか〜」
　「なんなんや？」

　例によって、魔法のステッキを取り出すめりっちゃ
　今度は一体なにを始めるつもりなのであろうか？

　「だから〜、めりっちゃの魔法で〜その人そっくりに変身して〜
　　そのひとそっくりの人を捜せば〜、簡単に見つかる〜みたいな〜」
　「・・・・・ああ、麗しの人・・」
　「年はいくつぐらいやったんや？」
　「２０才を少し越えたぐらいでしょうか・・・」
　「髪の毛の色は？」
　「オレンジ・・・・・」

　おいおい、全然目の焦点が合ってないぞ
　どうやら、記憶の一目惚れの相手にそのまま陶酔しているらしい
　それでも、質問には答えているだけましなのかもしれないが

　「長さはどうなんや？」
　「・・・肩ぐらいまでのストレート・・」
　「背丈はどのくらいや？」
　「１６０ｃｍぐらい・・・」
　「体型はどんなかんじや？」
　「・・・・スレンダー系・・・・」
　「だったら〜、それでちょっとやってみる〜、ていうか〜」

　”ハッピンバラリコズンパラリン！！”

　うーむ、亀の甲より年の功とはよく言ったものだとつくづく思う
　めりっちゃの魔法は、期待通りの成果を上げたのであった
　もっとも、一部では期待はずれと言うかもしれない
　そう、めりっちゃの魔法は今回も完全に成功したのであった

　「やっぱりめりっちゃって天才！！！」
　「・・・・・・・・・・・・・・・・」
　「・・・・・・・・・・・・・・・・」
　「え〜、めりっちゃのこと、誰も誉めてくれないの〜」
　「・・・・・おお、これでもっとはねるようか感じがあれば
　　完璧に、麗しの彼女・・・・・」

　うーむ、本当にうまくいったんだなぁ・・・・
　珍しいこともあるとしか言いようがない

　「どうしたんや、まりあ？」
　「う〜んとね・・・・まりあ☆この人どこかで見たような気がする・・・」
　「本当ですか、どこでみたんです？早く思い出して下さいよ」
　「そうなんか？うちはみたことあらへんような気がするんやけど」
　「めりっちゃもみてみたい様な〜」

　めりっちゃ、鏡はあっちだ

　「たしかに〜、めりっちゃも〜見たことある〜みたいな〜気がするって〜いうか〜」
　「せやけど、うちは見た事無いような気がするで？
　　なんで２人だけ・・・・・」
　「あー☆どこでみたのかおもいだした！！」
　「なんやなんや、どこでみたんや？」
　「そうそう、早く教えて下さいよ」
　「だったら、まりあのこと馬鹿にしない？」
　「ぜったいにしません」
　「ほんとうに？」
　「本当ですとも」
　「約束だよ☆」
　「約束します」

　・・・・・なんか、恥も外聞も無くなりつつあるなぁ・・・
　気持ちは分からないでもないけど

　まりあは、めりっちゃにそっと耳打ちする
　それを聞いためりっちゃは、突然笑い出した

　「なんなんや、いったい、なんでうちだけのけもんなんや？」

　”ハッピンバラリコズンパラリン！！”

　めりっちゃは、何も言わずにみねあに魔法を掛けたのだった
　そこに現れたのは・・・・

　年の頃は２１，２、成長したみねあの姿であった

　「これって、もしかして花見の時の隠し芸とちゃうか？
　　確か、そのときはうまいこと魔法がとけへんかったから
　　そのままかえったような気がしたんやけどな」
　「おお、その声、その姿、麗しの君にまちがいない！！！」

　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
　もはや、なにもいうまい・・・・・・・・

　「あ、あの・・・・」
　「まあええわ、ちゃんと成功したさかいに、相談料と探し賃で
　　締めて１０００Ｇやな、別に高い言うことはないやろ？」
　「よ、喜んでお支払いいたします」

　そういって、男は１０００Ｇ札を取り出すと、
　みねあの手に１０００Ｇ札をのせて・・・

　「で、いつまで手ぇ握ってるつもりなんや？」
　「あ、す、すいません・・・・」

　真っ赤になって手を離す男であった

　「で、これからどうするんや？」
　「あ、あの・・・よろしければ・・・仕事が終わってから・・・」
　「きゃは☆デートでもするの？」
　「せやな・・・なあ店長、今日は店しめてどっか出かけへんか？」
　「え？本当に・・・」
　「もちろん、３人分おごってくれるんやろ？」

　そういって、みねあは男に最高の笑顔を見せたのであった

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい