ここは、ティンカーベルの船上 　乗組員一同がガーベルによって連行されたウェンディの 　救出を話し合っている最中だ 　　　リラ：同族って・・・・ 　　リリト：・・・・・ 　リリトは、何か口の中で唱える 　次の瞬間、雷撃が天空めがけて走る 　　　一同：！ 　メイヤー：ほう、これは興味深い現象ですね キャラット：わあ、リリトさんすごいんだね 　　カレン：・・・・どうして、あのとき使わなかったの？ 　　　若葉：そういえばそうですね 　　リリト：・・・これは、呪われた力だからだ 　　　　　　魔女狩りについて聞いたことはあるか？ 　メイヤー：ああ、中性暗黒時代の終末を告げる虐殺ですか 　　　　　　一般に魔女狩りは中世暗黒時代特有の・・・ 　　　リラ：本題に関係ないでしょ 　メイヤー：しかし、一応基礎知識ぐらいは・・・ 　　　楊雲：・・・・・今はリリトさんの話を聞きましょう・・・ 　メイヤー：・・・・・はい、ごめんなさい 　なぜか、楊雲の言葉だけは素直に聞くメイヤーであった 　　リリト：・・・ずいぶんと罪のない人も犠牲になったが 　　　　　　魔法を実際に使える一族もいるのだ 　　カレン：じゃあ、その魔法が使える一族というのが・・ 　　リリト：そう、われわれ魔族というわけだ 　　　　　　私の一族はその力故に、いつの世でも異端者扱いされてきた 　　　　　　人里離れた山中か、人煙まばらな離れ小島へ棲むしかなかった 　　　　　　・・・・・・幸い、常人より優れた能力のおかげで 　　　　　　そのような環境でも生きていけたしな 　　　リラ：それと、ウェンディの誘拐と何の関係があるっての 　　リリト：ああ、今からそれを説明する 　　　　　　われわれの一族には伝説があるのだ 　　　　　　『いつか青き導き手が我らを解放する』という伝説が 　　　　　　どうやら、ガーベルはそれを真に受けているらしい キャラット：リリトさんは信じてないの？ 　リリトは、キャラットの言葉の調子に驚いた 　キャラット自身はそんな夢物語を簡単に信じれるようだったから 　　リリト：そんなものは伝説に過ぎない 　　　　　　第一解放するといったところで、誰から解放するというのだ？ 　　　　　　みなこの世界で生きていくというのに 　　　楊雲：・・・・・・・・・・・・・・・・・ 　　ティナ：・・・・・・・・・・・・・・・・・ 　　カレン：とにかく、ガーベルはそれを信じていて 　　　　　　ウェンディちゃんを捕まえれば伝説が実現すると思っているのね 　　リリト：そういうわけだ 　　　リラ：伝説なんて関係ないじゃない 　　　　　　どうやってウェンディを連れ戻すかだけが問題よ 　　カレン：そうねぇ、おね〜さんにもいい知恵うかばないわ 　　アルザ：そんなんぶっとばしてまえば済むやないか 　　　若葉：話せばきっとわかります！ 　　　リラ：だから、どっちも望み薄だっていってるんじゃない！ 　　　　　　・・・・・・あ〜あ、今１０万Ｇあればなんとか 　　　　　　なるかもしれないんだけど・・・・ 　　リリト：金ならあるだろう？ 　　　リラ：だ〜れがそんな金もってるってのよ 　　カレン：そうねぇ、おね〜さんもさすがにそれだけのお金はすぐに 　　　　　　用意することはできないわねぇ 　メイヤー：・・・・私は・・・お金を全部この船につぎ込んじゃいましたね 　　　リラ：ちょっと、若葉なにやってるのよ 　　　若葉：えっと、少しでも足しになればと思いまして 　どうやら、若葉は、あれやこれやと小銭を引っぱり出していたらしい 　　ティナ：私も・・・持ち合わせがないですね・・・・ 　　　リラ：あ〜もう、あたしがお金を管理してるんだから 　　　　　　あたしが『お金がない！』っていえばお金がないのよ！ 　　リリト：どこを見ている？金ならここにあるだろう？ 　　　リラ：あんた、それだけの金を持ち歩いてるの？ 　　リリト：現金で持っているわけではないが 　　　　　　私の首には賞金がかかっているだろう 　　　リラ：金のために仲間売るほど落ちぶれちゃ無いわよ 　　リリト：仲間？おまえ達は仲間を助けるために・・・・ 　　　リラ：招かれてこの船に乗ったら、誰でも仲間なのよ 　　カレン：そうね、リリトちゃんを売るわけにはいかないわね 　　リリト：おまえら、よほどの変人だな 　　　リラ：それは世の中の方が変わってるのよ 　　リリト：だが、ほかに方法は無いのだろう？ 　　　楊雲：・・・・・・方法はあります・・・・・ 　　カレン：船長、何か思いついたの？ 　　　楊雲：・・・・・・リリトさんにはつらい思いをさせるかもしれませんが・・・ 　　リリト：私の事は気にするな 　楊雲は、その言葉には応えなかった 　ただ寂しそうな表情を見せただけ 　　　楊雲：では、さっそく手紙を一つ書いてほしいのです 　　リリト：手紙？誰に？ 　　　楊雲：・・・・・・・ガーベルさんへ・・・・・・ 　　カレン：まさか、リリトちゃんにウェンディちゃんの 　　　　　　釈放を依頼してもらうわけ？ 　　　楊雲：・・・・・・そうではありません・・・・・ 　　　　　　・・・・手紙には、こう書いてほしいのです・・・・ 　　　　　　・・・・『ティンカーベルを占拠した、船を献上する代わりに 　　　　　　　　　　　身の安全を保障してほしい』・・・・・ 　　リリト：だが、ガーベルは用心深い 　　　　　　こんな手紙でのこのこと出てくるか？ 　　　楊雲：・・・・・・・その手紙をガーベルへ送るわけではないのです・・ 　一同まったく楊雲の発想についていけなかった 　当人に届ける意図がない手紙などなんに使うのだろう？ 　　　楊雲：・・・・・この手紙は、公爵殿へ届けるのです・・・ 　場面は変わってガーベルの屋敷 　屋敷の最深部、ガーベルの書斎にウェンディとガーベルの二人がいる 　ガーベル：さあ、そろそろ約束の地の話をしてくれてもよいでしょう？ ウェンディ：だから知らないんですったら！ 　ガーベル：おやおや・・・いくら温厚な私でもいいかげんにしないと 　　　　　　怒りますよ ウェンディ：・・・・なんでわたしばっかりこんな目に・・・・ 　その一言が、ガーベルの『何か』に触れた 　ガーベル：なんですと！『こんな目に』ですと！ 　　　　　　私がこれほど礼を尽くしてお願いしているというのに 　　　　　　われわれ魔族が通ってきた苦難の道が、あなたによって 　　　　　　救われる思えばこそあなたの態度にも我慢してきたというのに 　　　　　　その私の行為に対して『こんな目に』とおっしゃる ウェンディ：・・・・結局そういう態度をとるんじゃないですか 　火に油を注ぐとはまさにこのことだ 　ガーベルは、ものも言わずにウェンディの頬を平手打ちした ウェンディ：きゃあ！ 　ガーベル：・・・・・・・・・・・・・・・ 　　　　　　いいでしょう、あなたが話したくなるまで 　　　　　　いつまででもいていただきましょう・・・・ 　　　　　　時間はたっぷりとあります 　　　　　　われわれが堪え忍んできた何百年の時間に比べれば 　　　　　　たかだか二三日を待てない訳がない・・・・・ 　ガーベルは、手元のベルを鳴らす 　すぐにばいとおやぢが登場する 　　おやぢ：およびでしょうか？ムフッ 　ガーベル：客人を地下牢へご案内しろ 　　　　　　この部屋は暑すぎてお気に召さないそうだ 　　おやぢ：かしこまりましたです、ムフッ ウェンディ：ちょ、ちょっとなにするんですか 　普通の女の子のウェンディと、筋肉だるまのばいとおやぢで 　力比べをしても抵抗できるわけがない 　ウェンディは抵抗むなしく地下牢まで引きずられていった 　（がしゃん） 　　おやぢ：では、ごゆっくりとなさいませ、ムフッ ウェンディ：・・・・・なんでこうなるのよ・・・・ 　ウェンディは、部屋の中を見回した 　文字通り、なんにもない地下牢である 　それでも外界からわずかに明かりが漏れてくる 　さらには廊下にも常に明かりがともされている 　だが、地下牢の中には文字通りなにもない 　ただの土間である 　・・・・・・どうせ、誰も助けに来てくれるわけがないし・・・・ 　ウェンディは、ふと持ち歩いていた鞄を思い出した 　ガーベルに連行されるときに筆記用具を詰めておいた鞄だ 　ガーベルは最初ウェンディがそれを握りしめているのを止めなかった 　ばいとおやぢは、鞄を取り上げろとは言われなかったので 　取り上げもしなかった 　ウェンディ：やっぱり、こういうときは壁に文字を刻むんでしょうね・・・ 　ウェンディは鞄を開ける 　フィリー：ちょっとあんた、いつまで私をこの中に閉じこめとく 　　　　　　つもりだったのよ！ ウェンディ：なんであなたがそこにいるんですか！ 　フィリーは、そこで大きく息を吸い込むと 　可能な限りの大声で叫んだ 　フィリー：あんたが怪しげな人にのこのこついていくからでしょ！