ここは、リスボン郊外にあるガーベルの屋敷 　その奥の一室にこの屋敷の主の書斎がある 　窓一つない部屋、天井一面を埋め尽くすガス灯 　その割に部屋の中自体はさほど暑いとは感じないのは 　換気が行き届いているからだろう 　ガーベル：・・・・さて、そろそろ本題に入らせてもらいましょうか ウェンディ：何が本題ですか・・・ 　ガーベル：おやおや、まだ怒っていらっしゃる ウェンディ：当たり前です、なんの証拠があって海賊だなんて・・・ 　　　　　　ばかげてるじゃありませんか 　ガーベル：おやおや、私もやすくみられたものですねぇ 　　　　　　あなた方が海賊だなどと思っているなどとは・・・ 　　　　　　ちょっと侮辱にしてもひどいですよ ウェンディ：・・・・・・どういう意味なんです？ 　ガーベルは、すぐには答えなかった 　そのかわりに、戸棚からウィスキーを取り出してグラスに注ぐ 　ガーベル：あなたもどうですか？ ウェンディ：いりません 　ガーベル：別に毒などはいってませんのに 　ガーベルは、一口だけ口を付けると、グラスを壁にたたきつけた 　琥珀色の液体と、くだけ散ったガラスが床に散らばる ウェンディ：！ 　ガーベル：さて、単刀直入に聞きましょう 　　　　　　・・・・『約束の地』はどこにあるのです？ ウェンディ：やくそくのち・・・ 　ガーベル：とぼけてもだめですよ・・・あなたが伝説の導き手なのは 　　　　　　わかっているのです・・・ ウェンディ：そんなもの知りません！ 　ガーベル：おやおや・・・資格を疑っているのですか？ 　　　　　　私も選ばれたものの一員だというのに 　そういうと、ガーベルは手を上にかざす 　ガーベルが何か唱えると、手の中に青白い光を放つ球体が生じる 　その球体は、ウェンディの耳元をかすめると背後の壁で弾けた ウェンディ：きゃあ 　ガーベル：驚くことはないでしょう、初歩的な力 　　　　　　”エネジー・アロー”ですよ ウェンディ：・・・・・・・・・・・・ 　ガーベル：さて、教えていただきましょう 　　　　　　約束の地の場所を ウェンディ：そんなもの、知らないものは知らないんです！ 　ガーベル：おやおや・・・・こまりましたねぇ・・・ 　　　　　　仕方がありません、最初からお話しいたしましょう 　　　　　　それを聞けば、あなたも素直に話す気になってくれるでしょうからねぇ 　・・・・・・・・まったく、訳の分からないことを・・・・・・・・・ 　ガーベル：さて、最初に伝説からお話しいたしましょうか 　　　　　　「主、青き導き手を使わして我らを約束の地へとみちびかん 　　　　　　　そは永遠の都、すべての力の集まる場所 　　　　　　　傷つける者は癒され、貧しき者は与えられ 　　　　　　　蔑まれし者は尊敬される場所なり 　　　　　　　我ら、そこにいたらんと欲せばすなわち導き手を得るべし 　　　　　　　導き手はすなわち主の名と、主の運命を持つ者なり 　　　　　　　我らが主は吊り下げられし者なり、戦いを司る者なり 　　　　　　　世界の終わりの日に最初の槍を投ずる者なり・・・・」 　　　　　　　これくらいでいいでしょう？ ウェンディ：・・・・・・・・・・・ 　ガーベル：おやおや・・・・あなたが導き手である証拠がすべて揃っているのに ウェンディ：何が証拠ですか？だいたいなんで今の話から私が出て来るんです！ 　ガーベル：・・・・・・説明がいるとは思いませんでしたね 　　　　　　よろしいですか？ 　　　　　　我らが主・・・吊り下げられ、戦いを司る神といえば 　　　　　　オーディンに決まっているじゃありませんか 　　　　　　オーディン、別名ヴォーダン・・・そういえば、週の真ん中の日にも 　　　　　　名前が付いていますよねぇ・・・ヴォーダンの日 　　　　　　Wednesdayとね・・・ ウェンディ：私の名前はWendyです！ 　ガーベル：それは大した違いではありません 　　　　　　そして姓がMiseria・・・・Misery（苦難）というわけです 　　　　　　一つなら偶然でも、二つ重なれば偶然とはいいがたい・・・ ウェンディ：・・・・・・よくそこまでこじつけられますね 　ガーベル：だが、決定的な証拠はその髪の色ですよ・・・・ 　　　　　　誰だって、透き通るような青い色に 　　　　　　髪を染めるわけにはいきませんからねぇ・・・ ウェンディ：・・・・・・・・・・・・ 　そう、この髪の色 　父親とも、母親とも、アンディとも違う髪の色 　いつでもこの髪の色はいじめの対象になったものだった 　あらゆる毛染めを跳ね返した、頑固な髪・・・・ 　ウェンディの変化を、ガーベルは楽しんでいるようだった 　自分の言葉が、確実に「何か」をもたらしているのだった 　そう・・・・ガーベル自身が、自分自身の持つ力に気づいてから 　探し求めていた答え・・・正に、その答えが目の前にあるのだ 　場面は変わる、ここはティンカーベルの船上 　　カレン：あ、船長、どうだったの？ 　　　楊雲：・・・・・どこまで説明してあるのですか・・・ 　　　リラ：何も説明してないわ 　　　　　　こっちの客人の話を聞いてたところだから 　そう言って、リラはリリトの方を指す 　　　楊雲：・・・・・・そうですか・・・・・ 　　リリト：おまえは驚かないのか？ 　　　楊雲：・・・・珍しいことではありません・・・・ 　　リリト：まったく、変わり者ぞろいだな 　　　リラ：あんたもね 　まったく、その通りである 　　アルザ：なあ、めんどうなこと考えんと、とっとと 　　　　　　ガーベルとか言うおっさんぶちのめせばええやんか 　　ティナ：あの・・・暴力はよくないんじゃないかと・・・ 　メイヤー：そうですねぇ、ティンカーベルの性能なら 　　　　　　追手を振りきるぐらいのことは出来ますねぇ 　　　若葉：でも、話してみたらいい人だったりして（ほにゃ☆） キャラット：うん、ボクもそう思うよ（はあと） 　　　リラ：いい人が誘拐なんてするわけないでしょ！ 　　　楊雲：・・・・・問題はそこなのです・・・・・ 　　　リラ：は？一体どういう意味？ 　　　楊雲：・・・・・私の責任です・・・・・・ 　　カレン：船長の責任？どうしてそうなるの？ 　　　楊雲：・・・・ウェンディさんは、自発的に 　　　　　　ガーベルについていったようなのです・・ 　　　リラ：それと、船長の責任とどういう関係があるの 　　　楊雲：・・・・・順に説明します・・・・・ 　　　　　　・・・・まず、最初にティンカーベルへの臨検許可が 　　　　　　アルガンサ公エンリケによって認められたのです・・ 　　　　　　・・・申請者は、トマル伯ガーベル・・・・・ 　　　　　　・・・・・・ガーベルは、自分自身で臨検に訪れたのです・・・ 　　　リラ：それで？ 　　　楊雲：・・・・・ウェンディさんは私の言葉を 　　　　　　言葉通りに受けとめたのです・・・ 　　　　　　・・私は、ウェンディさんに誰も船に乗せないように言いました・・・ 　カレン：それで、ウェンディちゃんは、連行されたって訳？ 　　楊雲：・・・・・・事情聴取のために、 　　　　　自発的に同行したことになってるようです・・・ 　　　リラ：・・・・あんたらはどこへいたのよ 　　アルザ：うちに言われても困るわ、うちはあいつらぶっとばしたろ 　　　　　　思うてたんやけど、ウェンディはんが止めるんやから 　　　楊雲：・・・・そのためにウェンディさんに頼んだのです・・ 　　カレン：確かに、あそこで手を出していたら大事になってたわね 　　ティナ：事情聴取でしたら、すぐに釈放されるのではないでしょうか・・ 　　リリト：まず望み薄だな 　　　リラ：どう言うこと？なんであんたがそんなこと知ってるのよ 　　リリト：・・・あいつは、私と同族だからだ