ここは、カイルの船 　一時は乗員反乱の危機を迎えたカイルであったが 　それを鎮圧して見せたことでかえって株が上がっている 　彼の船は今まさにジブラルタル海峡に望むセウタの港にある 　この港、別名「海賊天国」 　来るものは拒まず理由は聞かずがモットーの港だ 　しかし、カイルがいるのは船長室 　彼のそばにいるのは青い髪の吟遊詩人 　ロクサーヌ：というわけですので、今から追いかけても 　　　　　　　ティンカーベルには決して追いつけないでしょう 　　　カイル：まったく、信じられん話だが・・・ 　ロクサーヌ：おやおや、大魔王は信じれても私の話は信じられないのですか？ 　　　カイル：いや・・・大魔王様の話も持ってきたのはおまえだからな 　ロクサーヌ：持ってきたわけではありませんよ 　　　　　　　たまたま、あなたが私の話を真に受けただけです 　　　カイル：だが、事実なのだろう？ 　ロクサーヌ：私は吟遊詩人、単なる語り手 　　　　　　　物語を作るのはあなた方です 　　　カイル：ふん・・・まあいい 　　　　　　　で、次にティンカーベルが向かうのはどっちなのだ？ 　ロクサーヌ：新大陸の古代遺跡 　　　　　　　伝説では、そこに捜し物があるはずです 　　　カイル：まさか、『アトランティス』などという 　　　　　　　３文小説話じゃないだろうな 　ロクサーヌ：よくご存じで 　　　カイル：・・・・・・・・・信用できるのか？ 　ロクサーヌ：トロイの物語ぐらいには 　　　カイル：まあいい、どうせ他に出来ることはないからな 　カイルは忙しく頭を巡らせる 　ロクサーヌの話についてではない 　大西洋横断のための物資を購入する資金を工面する方法を悩んでいたのだった 　場面は変わってティンカーベルの甲板上 　　　楊雲：・・・・・誰が上陸するのですか・・・・ 　　　リラ：そうね、出来るだけ手早く仕事を終わらせたいんだけど 　　　　　　カレンが怪我しているから、それなりに残ってもらう必要があるのよね 　　　　　　例の海賊はともかく、リリトが絡むとやっかいだし 　　カレン：そうねぇ・・・・おね〜さんも、さすがにこの状態じゃ 　　　　　　なめてかからない方がいいかもね 　カレンの右肩は未だにギプスで固められたまま 　カイルの銃弾による怪我はなかなかに深手なのだ キャラット：ねえねえ、こんどはどこに行くの？（はあと） 　　　リラ：だから遊びに行くんじゃないわよ 　　　　　　そうね・・・あたしは出かけるところがあるから 　　　　　　カレン、悪いけど買い付けはやってくれる？ 　　カレン：いいわよ、でも誰が残るの 　　　リラ：どのみちメイヤーとティナが残るんでしょ 　　　　　　でも、戦力としては全然当てにならないのよね 　　　リラ：船長も明日出航となると手続きに言ってもらわないと行けないし 　　　　　　そうなると留守を任せられる人がいないのよ 　そう、案外ティンカーベルに要員は少ないのである 　戦闘ではカレンやリラ、それにアルザの３人だけといって良いだろう 　逆に、留守を任せられるほどしっかりした人物も 　楊雲、カレン、リラの３人と言った有り様・・・・ 　一体、どんな基準で船員を選んだのかという疑問が出るのは当然である 　船長の楊雲には、なにか考えがあったのだろうか？ 　　　楊雲：・・・・・同時に出かける必要があるのですか・・・ 　　カレン：ちょっと、おね〜さん嫌な予感がするのよ 　　　　　　あのカーフがここでなにも仕掛けないって保証がないのよね 　　　リラ：たしかにその通りね 　　　楊雲：・・・・・手分けして素早く仕事を済ませましょう・・・・・ 　　カレン：おね〜さんも賛成ね 　　　リラ：そうね、まさかこれだけ素早く移動しているとは 　　　　　　さすがに想像もしてないでしょ 　　　　　　・・・・・・ 　　　　　　カレン、買い付けはお願い、キャラットを連れていって 　　カレン：分かったわ 　　　　　　必要なもののリストは？ 　　　リラ：若葉とキャラットを連れていって 　　　　　　とりあえず必要最低限のものはメモしておくから 　　カレン：分かったわ 　　　若葉：おまかせください☆ キャラット：わーい、おかいものだぁ（はあと） 　　　リラ：船長は出港手続きをお願い 　　　　　　とりあえず・・・そうね、なにがあるか分からないから 　　　　　　途中までは一緒に行くわ 　　　　　　手続きが終わる頃までには迎えに行くから 　　　楊雲：・・・・・あなたはどうするのですか・・・・・ 　　　リラ：ちょっと野暮用が、ね 　　　　　　ギルドに不義理はできないのよ 　　　　　　で、船長、留守は誰に任せるの？ 　　　楊雲：・・・・・ウェンディさんに・・・・・ 　　　リラ：ええ！？ 　　　楊雲：・・・・・ウェンディさん、留守は任せましたよ・・・ ウェンディ：え、わ、私ですか？ 　　　楊雲：・・・・引き受けてもらえますね・・・・ 　もらえますねもなにも、まったく選択権は与えられてはいない 　ウェンディを除けば、病室で寝ているティナと、研究に没頭しているメイヤー 　そして、、、 　　アルザ：なあ、うちはつれていってくれへんのか？ 　　　リラ：あんたまで出かけたら本当にだれも残らないじゃない！ 　危機感０のアルザだけなのである 　これではウェンディにまかせるより他しょうがないではないか ウェンディ：・・分かりました、で、なにをすればいいんでしょうか 　　　楊雲：・・・私が帰ってくるまで、誰も船に乗せないようにして下さい・・・ ウェンディ：それだけですか？ 　　　リラ：それが大変なのよ、わかってる？ ウェンディ：言われなくても分かってます 　フィリー：どうかしらねえ、あんたときどきぼけてるから ウェンディ：いっつもぼけてる誰かさんよりしっかりしてますけど 　フィリー：若葉、あんたすこしは怒ったらどうなの 　　　若葉：え、なんの話でしょう（ほにゃ☆） 　フィリー：・・・ごめん、私が悪かったわ 　天然は、このくらいの域に達しないと駄目なのである 　まだまだつっこみの修行の足りないフィリーであった 　場面は再び変わる 　ここは、ガーベルの城館 　控えているのは職業斡旋人、人呼んでばいとおやぢ 　もっとも、この城館の召使いは全員ばいとおやぢである 　ここの主人がどれだけ悪趣味か分かろうと言うものだ 　ガーベル：港の様子はどうです？ 　　おやぢ：仰せの通りの船がはいってまいりましたです、ムフッ 　ガーベル：くくくくく・・・上げ潮にのってきましたねぇ 　ガーベルは、状差しから一通の手紙を抜き取るとばいとおやぢに手渡す 　ガーベル：直ちに、これを公爵殿に届けるのだ 　　おやぢ：かしこまりました、ムフッ 　おやぢは、体に似合わぬ敏捷さでガーベルの元を辞する 　ガーベル：くくくくく・・・・もうすこし、もうすこしですよ・・・