夜のとばりがティンカーベルを包んでいた
　いま、ティンカーベルは静かにたたずんでいる

　　　リラ：あーあ、だからいわんこっちゃないのよ
　　カレン：ちょっとなめてかかっちゃたかな？
　　　　　　でも、このくらいかすり傷よ
　　　楊雲：・・骨が折れているのは、かすり傷とは言いません・・・・・
　　カレン：どうも、弾が残っている見たいね

　冷静に分析している場合でもないと思うが？

　　ティナ：あの、どなたか負傷されたと聞きましたが
　　　リラ：あ、良いところへ来たわ
　　　　　　すぐに弾丸の摘出手術をお願い
　　カレン：止血はしておいたんだけど
　　ティナ：すいません、ちょっと見せていただけませんか・・・・・・
　　　　　　ああっ、これはひどい・・・・・
　　カレン：そう？おねーさんはそれほどでもないと思うんだけどなあ
　　ティナ：私が医者なんですけど・・・
　　　リラ：ティナの言うのが正しいわね
　　ティナ：では、さっそく手術いたしましょう
　　　　　　一緒に来て下さいね
　　　　　　それから、手伝っていただける方をお願いします
　　　リラ：手伝いって、手術の手伝いのこと
　　ティナ：そうですけど
　　　リラ：あたしパスね
　　　　　　夜目の効く見張りが２人はいるから
　　　楊雲：・・・・・私がお手伝いいたしましょう・・・・
　　　リラ：船長もだめよ！
　　　　　　打ち合わせがあるんですからね
　　アルザ：なんや、要求がおおいんやなぁ
ウェンディ：食事の準備が出来ましたけど

　ウェンディが料理を作り終えたらしい
　ティンカーベルの甲板に上がってきた

　　　リラ：良いところへ来たわ
　　　　　　あんた、応急手当についてなにか知ってる？
ウェンディ：多少の心得ならありますけど
　　ティナ：多少とは、どのくらいでしょうか
ウェンディ：アルバイトで、近所のお医者様のところに
　　　　　　看護婦として務めていたことならあります
　　ティナ：手術に立ち会ったことは？
ウェンディ：それはちょっと、でも注射ぐらいは教わりました
　　ティナ：でしたら、ちょっと手伝っていただけませんか
　　　　　　カレンさんが怪我をされたようなので
　　カレン：ちょっとした怪我なんだけどね
ウェンディ：また私がなにも知らないと思って
　　　　　　その怪我の、どこが、ちょとなんですか
　　ティナ：話は後回しです
　　　リラ：その通りよ

　場面は変わって、医務室
　ティナとウェンディはさっそく室内の殺菌と手術道具の
　準備にとりかかった

　言うまでもなく、二人とも手術が可能なように
　白衣に着替えていた

　　カレン：おねーさんの買ってきた服がさっそく役に立ったわね
ウェンディ：え、まあ・・・・
　　　　　　すいません、上着を脱いでもらえます？
　　カレン：分かったわ、でもどこにおいておけばいいの
ウェンディ：私が片づけておきますから
　　カレン：そうなの、でもおねーさんの服は重たいわよ

　・・・・・・そんな重たい服があるわけ無いじゃないですか・・・・

　カレンは言われたとおりに服を脱ぐ
　ウェンディはカレンの服を持っていこうとするが、

ウェンディ：お、重たいですね、これは・・・
　　カレン：そうよ、おねーさんの服は鋼が編み込んであるから
　　　　　　上下会わせたら２０ｋｇはあるわね

　どんな服だよ、一体
　それより、そんなものを着てあれだけ運動できたのか
　確かに、化け物なのは知っていたけど・・・・
　たちまち、いまでも動けるのは不思議である
　骨が折れているはずなのだが？

　　ティナ：こちらの準備は終わりました
　　カレン：そうなの、じゃ、さっさと済ませましょ

　カレンはさっさと歩いて手術台の上に乗る
　ティナは手早く麻酔薬を用意する

　　ティナ：では、いまから始めますね
　　　　　　ウェンディさん、そこに並んでいる道具の名前は分かりますね
ウェンディ：はい・・
　　ティナ：では、始めます

　揺れる船の中、ティナが局所麻酔をカレンにかけると
　手際よくメスをふるっていく
　ウェンディも、さすがにアルバイトしていただけのことはあって
　ティナに手際よくメスや鉗子を手渡していく

　　カレン：どう、そろそろ・・・
　　ティナ：すいません、いま一番大事なところなんです

　やがて、ピンセットで銃弾がつまみ出される

　　ティナ：・・・・骨にひびが入っているだけのようです
　　　　　　これなら、それほど長引かないでしょう

　そして、縫合が終わって・・・・

　　ティナ：では、ギプスを付けますから
　　カレン：取れるまでどのくらい掛かるの？
　　ティナ：最低２週間はかかると思います
　　カレン：そんなにかかるの
ウェンディ：あの、動かないでもらえませんか
　　カレン：あ、ごめんね、ウェンディちゃん
　　　　　　それほどの重傷だとは思わないんだけどなぁ
　　ティナ：複雑骨折していないのが不思議なぐらいなんです
　　　　　　それに、こんな形の弾は珍しいですね
　　カレン：珍しいって
ウェンディ：・・・・そうですよね、私って不器用だから・・・
　　カレン：どうしたの？ウェンディちゃん
　　ティナ：カレンさんが動いたからギプスが上手くつかなかったんだと思います
　　カレン：あ、ごめんなさい、ウェンディちゃん
ウェンディ：いえ、私がもっと上手かったら・・・
　　カレン：じっとしてるから、終わったら教えてね、ウェンディちゃん
ウェンディ：・・・・・・・・・・・・・
　　　　　　はい、終わりました
　　カレン：もう動いていいの？
ウェンディ：はい、カレンさん
　　ティナ：では、これを見てもらえます？

　確かに、普通の丸玉ではない

　　カレン：なにかしら？
　　　　　　長細い弾なんて始めて見たわ
　　　　　　うわさには聞いたことがあるけど・・・・ライフル弾？
　　　　　　でも、ピストルで線条が切ってあるって・・・
　　　　　　まあ、これは後で他の人にも見てもらいましょ
　　ティナ：そうですね
　　カレン：じゃ、ウェンディちゃん夕食にしましょ
　　　　　　遅くなっちゃったけど
ウェンディ：はい、ではみんなに知らせてきます