さて、この勝負はどうなるのであろうか？ 　　カイル：左舷砲戦用意！帆を張れ！ 　チャンプ：イエッサー、キャプテン 　どうやら、カイルは優速を利して一撃をくわえてから 　接舷戦を挑むつもりらしい 　既にごろつき達は乗り込みの準備にかかっている 　チャンプは、帆走要員に指示を出す 　カイルは、見張り台から降りてきた 　　カイル：どのくらいで追いつく？ 　チャンプ：大体２０分 　同時刻、ティンカーベル 　　　楊雲：・・・・どうやら、来たようですね・・・・ 　　アルザ：なんや、うちにはなにもみえへんで？ 　　　リラ：タイミング的には、来ても良い頃ね 　　カレン：アルザちゃん、見つけたら合図してよ 　　アルザ：わかってるって 　アルザは、ひたすら陸側に目を向ける 　やがて、陸影にかくれて接近する一隻の船を見つけた 　　アルザ：ふねがきてるで 　　　　　　右舷、５時の方向 　　　リラ：全く予測通りね 　　　　　　キャラット！配置について！ キャラット：はーい 　キャラットは、帆を畳むためのウィンチに手を掛ける 　　　楊雲：・・・・・微速前進・・・・・・ 　メイヤー：微速前進、よーそろー 　帆船のマストが、甲板上からでも見えるようになった 　もちろん、注意しているから分かる、といった程度だが 　来ることが分かっていなければ、見落としていたかもしれない 　　カレン：もう少し引きつけないとね 　さて、場面を同時刻のカイル達の方に移してみよう 　　カイル：・・・・・動きはないようだな 　チャンプ：確かにそうだ、この分ならあるいは最初の一撃で 　　　　　　決着が付くかもな 　　カイル：まだ勝ったわけではない 　がらにもないセリフだな 　だが、勝利を確信するのも無理はない 　理想的な風を受けて接近しているカイル達 　あと７分ほど気づかれずに済めばいいのだ・・・ 　カイル達にとって、時間はまどろっこしいぐらいにゆっくりと流れていく 　徐々にティンカーベルの姿がはっきりと見えてくる 　　カイル：砲撃用意、目標、敵船体 　そのころ、ティンカーベルでは・・・ 　　　楊雲：・・・・・そろそろ良いでしょう・・・・ 　　カレン：船長、じゃあ 　　　楊雲：・・・・・・帆を畳んで下さい・・・・・・ 　　　リラ：キャラット！ウィンチを巻いて！ キャラット：はーい 　キャラットがロープを巻き上げていくと帆が畳まれていく 　　　楊雲：・・・・全速後進・・・・・ 　メイヤー：全速後進、よーそろー 　ティンカーベルは見る間に減速していく 　やがて、行き足が止まると徐々に後退を開始 　後退速度は徐々に早まっていく 　あっと言う間に間隔が詰まっていく 　そのとき、カイル達は・・・・ 　　カイル：なんだ？急に帆を下ろしたぞ 　チャンプ：どうやら、夜間は航行を休むつもりらしいな 　　カイル：はっはっは、これで奴等も終わりだな 　　　　　　ついにおれ様の野望が達成されるときが来た 　そう言うことは、勝った後で言った方がよいと思うが？ 　　カイル：？？？ 　　　　　　接近速度が速すぎるのではないか？ 　チャンプ：言われてみればそうかもしれない 　　カイル：潮流の影響なのか？ 　チャンプ：いや、碇を降ろすことが出来るはずだから 　　　　　　潮に流されるとは思えないが 　　カイル：？？？ 　同時刻、ティンカーベル甲板上 キャラット：まき終わったよ 　　　リラ：じゃ、すぐに船室に入りなさい！ キャラット：はーい 　キャラットは、自分の船室に降りていく 　そう、ティンカーベルは逆進を掛けてわざと接近速度を上げたのだ 　もちろん、砲撃を受ける回数を減らすためである 　見る間にカイル達の船が接近してくる 　目一杯に帆を開いて、出せるだけの速力を出して 　やがて、ティンカーベルと同行体制に入った 　　　楊雲：・・・・・動力伝達系切断・・・・・ 　メイヤー：動力伝達系切断、よーそろ 　ティンカーベルの動力を切り放した 　これで、ティンカーベルの後進の速度が徐々に落ちていく 　　　楊雲：・・・・みんな、伏せて下さい・・・・・ 　ティンカーベルの甲板上の人達が伏せると 　突然砲声が轟いた 　ティンカーベルめがけてカイル達が砲撃をくわえてきたのだ 　砲撃をくわえた後も、カイル達は急速に間合いを詰めてきている 　どうやら、第２撃をくわえるつもりは始めから無いらしい 　接舷戦を挑んでくるようだ 　だが・・・・・・ 　　アルザ：いっくでぇ 　アルザは、いきなり見張り台から銛を手にすると 　カイル達の船にめがけて飛び移っていった 　銛の後ろにはロープが結わえられている 　どすっ 　アルザは、銛を甲板に打ち込んだ 　　カイル：な、なんだ！ 　　アルザ：うちは、アルザ・ロウちゅうねん 　　　　　　よう覚えといてや 　そう言うなりアルザは正に乗り移ろうとしていた 　ごろつき以下１０人ほどの接舷要員に飛びかかっていく 　一方、叩き込まれた銛についているロープのもう一端はといえば 　カレンが引っ張っているのであった 　徐々に二隻の間隔が縮まっていく 　さて、アルザの活躍ぶりに話を移そう 　　アルザ：なんや、もう終わりか？ 　そりゃ、完全な奇襲で体勢整える暇もなかったのだから無理もない 　第一、カイルの部下じゃないか 　弱いのもしょうがないって 　ごろつきは一等最初にのされたことは、言うまでもない 　チャンプ：ほう、多少は出来るようだな 　　　　　　相手にとって不足はなさそうだ 　　アルザ：なんや、あんた 　チャンプ：この船の副長のチャンプ 　　アルザ：ちょうどええわ 　　　　　　ウォーミングアップも終わったさかいに 　体格差だけを見れば、勝負は自ずと見えている 　だが、チャンプは相手の力量を見誤っているわけではない 　チャンプは、構えた 　　アルザ：チャンプ、ちゅうからには、やっぱりこれやろ 　アルザの構えは、完全にボクシングのファイティングポーズだ 　どうやら、プロレス対ボクシングの異種格闘技戦になるらしい