ティンカーベルはバレンシアに近づいていく 　やがて帆柱が林立しているのが目に入る 　灯台と防波堤も目にはいるようになる 　ここが、西地中海最大の港 　ジェノヴァ、ヴェネチアに優るとも劣らぬ街 　バレンシア 　７つの海を駆ける大型帆船 　地中海を我が物顔に進むガレー船 　中小港なら、年に一度見るかどうかの大型船が 　ここには数え切れないほど停泊している 　ティンカーベルなど、この港ではまるで子供の玩具だ 　　アルザ：うわー、こんなでっかい船始めてみたわ キャラット：すごいね☆ 　　　リラ：・・・・これでいいわね 　　　　　　キャラット！なにぼんやり見てるのよ！ 　　　　　　ほら、そこの縄を引っ張って キャラット：はーい 　キャラットがロープを引くと、勢いよく旗が揚がる 　いや、ロープにいろいろな小旗が繋がっているものを 　キャラットが揚げたと言うべきだろうか 　ティンカーベルの揚げた旗に応じて、港にある 　一つの塔から旗・・いや、連なった小旗が上がった 　　　リラ：・・・・西１５番埠頭ね 　　カレン：西１５番埠頭？・・・どっちなの？ 　　　若葉：どちらなのでしょうか？☆ 　　　リラ：はあ、これが航海士ねぇ・・・・ 　　　　　　いいわよ、あたしが水先案内をやるから 　リラの指示をあれこれ紹介するのはやめよう 　ただ、適切な案内で、停泊できたとだけ述べれば十分であろう 　　　リラ：・・・・はい、これで終わり 　　　楊雲：・・・・全員集合・・・・ 　　カレン：みんな、集まって！ 　アルザ：はいな 　だから、見張り台から飛び降りるなよ、アルザ 　良い子のみんなは危ないからマネをしないように 　　カレン：それで、これからの予定はどうするの？ 　　　楊雲：・・・私は港湾事務所に向かいます・・・・ 　　　リラ：あたしらは船の点検をしないと 　　アルザ：なあ、はよ街にいこうや 　　　　　　うち、じっとしてられへんたちなんや 　フィリー：私も一緒に行くわよ キャラット：ボクも行きたいなぁ 　　　リラ：あんたは居残りっていったでしょ！ 　　　　　　ちゃんと仕事しなさい キャラット：はぁーい 　　　楊雲：・・・・若葉さんも、私についてきて下さい・・・・ 　　　若葉：はい☆船長 　　ティナ：私は、何をすればよろしいでしょうか？ 　　カレン：ティナちゃんはお昼の準備をしてて 　　ティナ：はい 　メイヤー：私も上陸までの間、機関部の点検をしておきましょう 　・・・・・・・ 　また一人足りない 　　カレン：ほら、ウェンディちゃん、行くわよ ウェンディ：え？本当に行くんですか 　　カレン：当然じゃない ウェンディ：わ、わたしやっぱり・・・・ 　　カレン：これから、ずっと同じ服を着通すつもりなの？ 　　　　　　あんまり、おねーさんを困らせないでほしいなぁ 　　アルザ：せや、はよいこうなぁ ウェンディ：え、あ、ちょっと、何するんですか 　アルザは無理矢理手を引いてウェンディを連れていく 　その後を早足でカレンが追いかける 　　カレン：くすっ・・・素直じゃないんだから 　場面は変わって、ここはバレンシアの洋服店 　「ジュリエッタのお店」 　　カレン：ジュリア、いる？ 　ジュリア：いらっしゃいませ・・・あ、カレンさん 　　　　　　お久しぶりです 　出迎えたのは、１７から１８才ぐらいの少女 　　カレン：ほんとに久しぶり 　　　　　　あなたも元気そうでよかったわ 　　　　　　そうそう、今日はこの子の服を買いに来たのよ ウェンディ：・・・・・・・・ 　ジュリア：では、採寸させてもらいますね 　　　　　　はい、まずは背筋を伸ばして下さい ウェンディ：あ、あの・・・ 　　アルザ：なあ、ここ食べるもんあらへんか？ 　　　　　　うち、おなかすいた 　　カレン：あらあら、アルザちゃんは食べることしか興味ないの？ 　　アルザ：食う寝る遊ぶは、人生のすべてやで 　ジュリア：着飾ることも楽しみの内だと思いますけど 　　アルザ：着飾ったら動き回れへん 　ジュリア：では、スポーティな服はいかがでしょうか 　　　　　　私の店には、そう言った方のための服も多数用意してます ウェンディ：私のお店？ 　ジュリア：はい、私がここの店主 　　　　　　ジュリア・ジュリエッタです 　　　　　　・・・・えっと、次は少し腕を上げて下さい 　　　　　　・・・はい、肩の力を抜いて下さい ウェンディ：大変でしょうね 　ジュリア：まあ、大変といえば大変ですね 　　　　　　一人でこれだけの店を維持しようと思うと ウェンディ：一人で？ 　ジュリア：店員を雇うだけのゆとりがありませんから・・・・ 　　　　　　・・・・はい、採寸は終わりました 　　カレン：ねえ、ウェンディちゃん 　　　　　　どんな服がほしいの？ ウェンディ：・・・あの、私・・・ 　　アルザ：なあ、うち、これきにいったんやけど 　　カレン：あら、アルザちゃんも服がほしいの？ 　　アルザ：・・・なんや、あいさつやなぁ 　　　　　　うちはウェンディに似合う服を探してたんや 　　カレン：そうなの？ごめんなさいね 　　　　　　ウェンディちゃん、これなんかどう？ ウェンディ：あの・・ 　ジュリア：とりあえず、試着してみられてはどうでしょうか？ 　　　　　　仮縫いしてあるだけですから、後で体に合うように 　　　　　　仕立てますから、いまサイズがあわないのは大丈夫です 　　カレン：それが良いわね ウェンディ：あの、私やっぱり・・・・ 　　カレン：もう、ウェンディちゃんったら 　　　　　　ここまで来たんだから、ね 　ジュリア：私、鏡を持ってきますね 　　アルザ：なあ、着てみてぇな、うち、きっと似合う思うねん 　数分後 　　カレン：・・・なかなか似合ってるじゃない 　　アルザ：当然や、うちが選んだんやさかい 　水兵服、水兵帽、少しゆとりのあるズボン 　全体が白を基調に統一されている 　ジュリア：最近、セーラー服は流行なんですよ 　　カレン：ふーん、 ウェンディ：・・・・あの・・・・ 　　カレン：どうしたの？ウェンディちゃん 　　　　　　・・・気に入らなかったら、遠慮無く言って頂戴 ウェンディ：あの、・・良い服だと思います・・・ 　ジュリア：これになさいますか？ 　　カレン：ジュリア、もう少し見せてくれる？ 　　アルザ：なあ、これなんかどうやろ？ 　アルザはいつのまにか別の服を持ってきている 　もちろん、３人はウェンディに着せてみた 　アルザが今度持ってきたのは、黄色い半袖のワンピース 　もちろん、スカートの部分はミニ 　・・・膝上１５ｃｍ ウェンディ：あの、もう少し丈が長くなりませんか？ 　ジュリア：では、このくらいに致しましょうか？ 　　アルザ：あんまり下げたら動きにくうならへんか？ 　　カレン：膝が見える程度の所までは延ばした方がいいかもね 　ジュリア：でしたら、もう少し丈を伸ばして・・・ 　　　　　　こんな所でしょうか？ 　フィリー：・・・あんたたち、誰か忘れてない？ 　ジュリア：妖精さんですか 　　　　　　いらっしゃいませ 　　　　　　でも、妖精の方のための服はおいてないんです 　フィリー：そうなの？ 　ジュリア：すいません 　　アルザ：なあ、これなんかどうやろ？ 　　カレン：着せてみれば分かるわよ 　カレンは、アルザの方を見もせずに言う 　見てから言った方がいいと思うのだが ウェンディ：なんなんですか、これは 　　カレン：見ての通りじゃないの？ 　　アルザ：なんやろなあ、真っ白な服やおもうてもってきたんやけどなぁ 　フィリー：あんた、知らずに持ってきたの 　アルザ、それはナース服だ 　　アルザ：あと、真っ黒な服もあるねんな 　　カレン：アルザちゃん、それは喪服よ ウェンディ：いい加減にして・・・・ 　・・・・・・・言って通じる相手じゃないわね・・・・・ 　　アルザ：どうしたんや？ ウェンディ：・・・・なんでもないです 　　カレン：アルザちゃん、やっぱり喪服はまずいわよ 　　アルザ：ふーん、これが喪服っちゅう服なんか 　　　　　　やっぱり、黒ずくめじゃ辛気くさいわなぁ 　フィリー：もう、あんた根本的にセンスがないわね 　　　　　　私が選んであげるわよ 　　　　　　・・・・・ 　　　　　　はい、これ着てみて 　・・・・・・・・・・・ 　　カレン：これも似合ってるわね 　　アルザ：えらい動きにくそうな服やなぁ 　フィリー：あんた、美的センスってものがないの 　フィリーが選んだのは、木綿のドレス 　フリルのついたロングスカート 　レースのついた白いシャツ 　それでいて、全体はシンプルにまとめられている 　　アルザ：なあ、うちはこっちの方がいいと思うねんな 　　カレン：着てみれば分かるわよ ウェンディ：さっきはそれでだまされたじゃないですか 　　カレン：ナース服も似合ってたわよ 　フィリー：似合えば良いってもんでもないでしょ 　ジュリア：試着されますか？ 　・・・・・・・ ウェンディ：・・・なんなんですか、この服は 　　アルザ：さあ、うちようしらんわ 　　　　　　動きやすそうや思うただけやねん 　ジュリア：友達が、アメリカで流行しているって 　　　　　　言ってましたよ 　フィリー：そうなの？ 　　　　　　でも、どう見ても作業着にしか見えないわよ 　ジュリア：ええ、元は作業着だったんですよ 　ジージャンにジーパン、完全に体の線が出ている 　フィリー：もっと、かわいい服にしなさいよ 　　　　　　はい、これなんかどう？ 　　カレン：あらあら、完全に目的を忘れちゃってるわね 　フィリー：うるさいわねぇ 　　　　　　はい、これなら動きやすくて、女の子らしいわよ 　・・・・・・・ ウェンディ：どう見ても、ウェイトレスの服なんですけど 　　アルザ：ウェイトレスって、なんや？ 　フィリー：あんた、ウェイトレスも知らないの 　　　　　　食堂で、料理を運んでくれる女の店員さんが・・ 　　アルザ：食堂で料理を運んでくれるんは 　　　　　　割烹着を着たおばちゃんに決まってるやんか 　フィリー：あんた、普段どんなところで外食してるのよ ウェンディ：あの、私の服を買いに来たんじゃないんですか 　　　　　　・・・やっぱり・・・ 　　カレン：ウェンディちゃん、気に入ったのがあった？ ウェンディ：え、ええ・・・・ 　　カレン：ウェンディちゃんも、気に入ったのがあったら 　　　　　　試着してみなさいよ ウェンディ：いえ、私は今までので・・・・ 　からん、からん、からん、からん 　ジュリア：あら、正午になったみたいですね 　　アルザ：なあ、そろそろもどらへんか？ 　　　　　　うち、おなかすいた ウェンディ：あ、私も・・・・ 　フィリー：じゃあ、そろそろきめないといけないわね 　　　　　　もちろん、私の選んだ服でしょ、ウェンディ 　　カレン：フィリーちゃん、ウェンディちゃんを脅さないの 　　　　　　ウェンディちゃん、他に気に入ったのはある？ ウェンディ：いえ、別に・・・・・ 　　カレン：そう、じゃあ、会計を済ませているから 　　　　　　先に、帰っていて良いわよ 　　アルザ：じゃあ、うち先に帰ってるわ 　　　　　　なあ、ウェンディはん、一緒に帰ろ ウェンディ：だから、なんでいつも手を引っ張って行くんですかぁ 　フィリー：あー、抜け駆けはずるいわよ 　からんからん 　ジュリア：賑やかな人達ですね 　　カレン：そうね、退屈しないわよ、一緒にいると 　ジュリア：で、どれにするの？ 　　カレン：全部頂戴 　　　　　　明日の朝までに仕立てて、西１５番埠頭のティンカーベルまで 　　　　　　届けてね 　ジュリア：いつもながら、急ぎなんですね 　　　　　　特別料金をもらわなきゃ 　　カレン：いいわよ、お金は小切手で今払うわね 　　　　　　で、まえに頼んでおいたことだけど・・・・ 　ジュリアの表情が変わった 　そして、カレンの表情も 　ジュリア：カレン、今ティンカーベルに乗ってるの？ 　　カレン：ええ、そうよ 　ジュリア：だったら、悪い話と悪い話と悪い話があるわね 　　　　　　どれから聞く？ 　　カレン：最初の悪い話から 　　　　　　でも、どれも手短にお願い