校庭の丘にある木の下で卒業式に女の子の告白で出来たカップルは永遠に幸せになれる。

 

どこかで聞いたような話である。
もちろん、今となっては伝説となったゲームに出てくる設定だ。
よく考えればやたらに条件が厳しい上に、本当にそんな伝説のある木があったら
卒業式には次々とカップルが押し寄せることになるだろう。

 

ゲームの中だからそれっぽく見える設定である。

 

が、そういう面白そうな設定を見逃さない人も世の中にはいるわけだ。

 

「遅い遅い立香。私なんて予定時間の６分前に来たんだよ」
「すいません先輩、５分前到着で」
「（あは）ごめん立香。謝ることないよ」
「それで、先輩。今日はなんでしょうか？」
「じゃーん。これ見てよ」
「なんでしょう？校庭にこんな木は無かったと思うんですけど・・・」
「あのね。これって、『卒業式にこの木の下で告白すると永遠に幸せなカップルになる』木なんだよ」

「先輩。本当にそういう木なんですか？すごいです」
「えへへ〜って、私だけで作ったんじゃないけどね。
　ゲームの中のイデア情報を現実にするって事だから、先生や理子ちゃんやＰ−４にも
　たくさん協力してもらったんだよ」
「そうなんですか。それなら本当に効果がありそうですね」
「うん。だから、効果があるかどうかこれから試してみるんだよ☆」
「それで、私に？」
「そう。たくさん宣伝して欲しいんだよ。
　立香も使う予定あるんでしょ」
「え、ええと・・・」
「私から後輩への卒業プレゼント♪
　がんばって宣伝してね」
「はい！先輩のためなら、私、がんばります」
「肩に力を入れない方がいいよ。一生に一度の高校卒業なんだから楽しまなきゃ」
「はい。そうですね」

 

立香は霰に一礼すると、校舎へと帰っていった。
今日は授業のある日。霰は理子ちゃん公認で実験装置、
つまり、伝説の木を据え付けに来た訳である。

 

立香を見送る霰は一言つぶやく。

 

・・・・ちょっとした、罪滅ぼしだよ・・・・

 

何がどう罪滅ぼしなのか、そこまでは霰も話さない。
ともかく、伝説の先輩が作った伝説の木の噂は、
たちまち学校中を駆けめぐったのである。